中谷宇吉郎の「虹」

少し前に続いて、今日も東京では虹が見えた。たぶん、方々のブログに虹の写真がでてくるのではないかと思う。
虹を見ながら、中谷宇吉郎の「虹」を思い出していた。もう60年以上も前に発表された話ではあるけれども、残念ながら、入手性がよくなく、そして、中谷がこの話で取り上げている虹の特徴は、この時代でも常識にはなっていないので、紹介する価値があるのではないかと思う。 中谷は虹の特徴として次のような点を上げている。
1、主虹は内側から紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の順になる
2、副虹の順は主虹と逆である。
この二つは、Webによくある虹の説明にも記されていることである・
これらについての説明は、それらのWebや本に譲って、先に進むことにしよう。何しろ、中谷の虹の真骨頂はこれからなのである。

中谷は上記の2つの特徴に加えて、下記の事柄を虹の特徴として加えている。
3、主虹と副虹の間の空はほかの領域に比べて暗くなる
4、主虹の内側、副虹の外側に余り虹が出ることがある。
5、虹の幅は必ずしも一定ではない。また、楕円になることもある
6、虹によっては、7色は均等には出現せずに、特定の色の幅が広い。
そして、これらの観察事実について「一度でも本当によく自然を見た人には、虹の色というようなわかり切ったことにも、すぐ疑問が出てくるはずである。それが当然なのであって、実は分かり切ったことではないのである」、そして「「虹は水滴の反射屈折によるスペクトルの作用さ」と言って、それ以上実際の虹を見ない人がある。そういう人には虹の美しさは分からない。学問によって眼をあけてもらうかわりに、学問によって眼をぶされた人である。」と、なかなかに辛辣なことを言っている。
今日の7時前に見た虹は、日がほとんど沈みかけていて、地面からほぼ垂直に立ち上がるような一部で、外側が暗いか、幅が違うかは分からなかったけれど、明らかに赤色部分の幅が広く感じられた。何度も虹を見たことがあるはずだけれども、ちゃんと見たことがなかったと改めて感じた次第である。
さて、中谷によれば、これらの特徴の3番目は反射と屈折の法則で説明ができる。計算すると、虹の外周の水滴からの反射光は虹を見ている人の方向にはいかない。違う方向に反射されてしまうために暗くなるという。
そして、4番目以降の現象は光の干渉を考えないと説明はつかず、光の干渉の状態は水滴の大きさに依存するので、虹毎に見え方が異なるのだという。詳細に興味があるかたは原典に当たられたい。虹は、中谷の随筆集「霧退治」の他、中谷宇吉郎集第5巻に集録されている。
それにしても、60年も前に、おそらく一般から青少年向けの科学雑誌に書かれた話が、その後に忘れ去られてしまって、未だに虹に関しては反射屈折のみの、安直な説明しか世間に流通していないのは何故なのだろう。
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by zam20f2 | 2009-07-27 21:12 | 文系 | Comments(0)
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