自宅でできる液晶観察(その1)

Web上見られる液晶に関する実験は3種類ぐらいに限定されているように思える。



比較的多くあるのが、ヒドロキシプロピルセルロースを使った実験で、コレステリック液晶アクセサリーを作ったり、複数の濃度や温度による色の変化を見る物である。2番目はネマチック液晶を使った表示デバイスの作製で、VAやIPSがテレビの主流になっている今日でもTN型表示素子が主流である。そして、3番目はコレステロール系の液晶化合物を使うもので、ヒドロキシプロピルセルロースと同様に温度による色調変化を見る他、合成を試みている例も存在している。
もちろん、これらが液晶に関連した実験ではないと言うつもりはない。でも、個人的な感覚としては、これらの実験は液晶に関する理解を深める実験とは、とても言えないと思う。
ヒドロキシプロピルセルロースやコレステロール誘導体を使った発色の実験は、発色の理由を大学生や中高生にきちんと説明するのはとてつもなく難しい。右螺旋のコレステリック液晶は右円偏光のみ反射することが知られているけれど、少なくとも私はそれを科学的にごまかしなく、中高生に説明することはできないし、また、それを行っているWebや文献を見たこともない。確かに、コレステリック液晶の発色はきれいで目を引くものではある。でも、それを単独で見せられても、彼らが習いつつある科学とは別の何かにしかならない。
TN型液晶セルの作製も液晶の実験としては、かなり高度なものである。もちろん、コレステリックの呈色と同様に、とりあえず電場で明暗が変化するのは比較的容易である。でも、入射偏光の方向が液晶の配向変化に沿って回転していくのをきちんと説明するのは、コレステリックの発色と同じぐらい困難だ。
コレステリック液晶もTNセルも、確かに、比較的容易にでき、一応の結果は得られやすい実験ではある。しかし、科学的意味合いや液晶に関する理解を深めるかを考え出すと、疑問の多い実験なのである。
極東の島国においては、科学教室というと、楽しいとか、子どもの目がキラキラとか非科学的な言明が飛び交いがちだけれど、21世紀の世の中、そろそろ、かれらが自ら思考するようになることや必要な知識を助ける科学教育が考えられるべきだろうと思う。
では、液晶に関する理解と科学的な知識が深まる実験とは何かと問われたら…素直に、液晶の顕微鏡観察と答えてみたい。それも、温度を変化させて等方的液体から液晶に変化する様子とか、結晶状態との違いの観察も含めてだ。そもそも、液体と結晶の間に、非常に多様な中間状態があることが、科学的な驚きなのである。それらは、コレステリック液晶の発色や、TNセルの電場応答より直感的には面白くなく、理解のためには、ある程度の知識が必要なことである。だが、それ故に、物質の状態に関するより深い理解へと導いてくれる。だから、液晶を素直に眺める機会を作ってあげるべきだと思う。

こんな事を書くと、顕微鏡観察には偏光顕微鏡やホットステージが必要だから、設備のあるところでしかできないというお叱りがやってきそうである。確かに、偏光顕微鏡は欲しい。でも、最悪、普通の顕微鏡に市販の偏光子を組み合わせればどうにかなる気がする。そして、ホットステージも市販品は高いけれど、最低限のものを自作すれば、それなりの値段でどうにかなるだろうと思う。

と言うわけで、少し時間はかかると思うけれど、「家庭」で液晶観察を試みるための機材の入手・作製法を紹介してみようと思う。家庭という言葉をカギ括弧に入れたのは、紹介する内容は、さすがに、すべての家庭では不可能だろうとは思うからである。そういう意味では家庭というよりは、高等学校程度の課題研究でと言い換えた方がよいかもしれない。とはいえ、家庭でも決して不可能ではないことを実証すべく、本当に家にあるものだけで、出来ることをやってみるつもりである。
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by zam20f2 | 2010-04-04 22:22 | 液晶系 | Comments(0)
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