基礎科学講座

筑波大学付属高等学校では、平成19年度より「基礎科学講座」という特別授業を実施しているそうである。  この講座をもつようになった経過やねらいは、およそ次のようである。
 二年間にわたって「生徒の認識について」「生徒の生活意義について」などの調査を行った結果、生徒が思考力や創造力に乏しく、身近にある悩みや苦しみを自分の力で解決しようとする意欲や力にかけている点が明らかになったそうである。
  そして、これは、この付高だけではなく、現代の高校生の大きな弱点であり、この原因の大半は現行の高校教育過程・教育内容にひそむ欠点や生活指導のあやまりによるものではないかと解釈した。
 そこで、「具体的な資料による生徒の生の考察を通して、自然科学・社会科学・人文科学における様々な事象に流れる法則性を理解する能力や態度を養い、また社会現象にひそむ問題点や矛盾をさぐり出し、それを解決するための力や態度を養う。」というねらいで、この講座を設けるようになったとのことである。
 すなわち、高校教育において、科学的認識を育成するために、生徒の実態に即しながら、基本となる科学的なものの考え方を体系的に学習させていこうとするものであるともいっている。
 ところで、「科学的認識」とは何であろうか。この点については、特に、次の二点を上げている。
 第一に、事実にもとづいて考えていかなくてはならない、という点である。
 第二に、法則にのっとって考えていかなくてはならない、という点である。
 事実にもとづいて考えようとすると、とかく法則を忘れて、てんでんばらばらの思考に陥り、思いつき勝手気ままの独善に堕しやすい。また、法則にのっとって考えようとすると、それに拘束されて事実を無視して、いたずらに観念的思弁をもてあそぶことになりやすい。事実にもとづいて考えていくことと、法則にのっとって考えていくことの二つが具体的に統一されていく自主性のある思考、こうした「思考の柔軟性」が科学的認識の中核であるといっている。
 付属の先進的な研究に敬意を表するとともに、このようなことを小学校の問題としても取り入れていきたいと思う。

この文書は「教育研究」22巻1号(昭和42年)に掲載されていた文書を一部改変したものである。著者は中川三郎氏で東京教育大学附属小学校教諭、数学科研究部である。
改変した部分は最初の一行で、改変する前の文書は
 東京教育大学付属高等学校では、昭和39年度より「基礎科学講座」という特別授業を実施しているそうである。
である。それにしても、40年以上前の文書とは思えないくらい現在と共通した内容になっている。昭和42年はそろそろ高校紛争が始まりつつある位で、「身近にある悩みや苦しみを自分の力で解決しようとする意欲や力にかけている」という状況にあったとは思いがたいのだけれど、当時の教員からはそのように見られていたわけで、不思議な気分にさえなる。
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by zam20f2 | 2010-05-05 13:45 | 文系 | Comments(0)
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