USB2000は分光測定に大きな変化をもたらした。それまでは、光学系を組んで分光器を回さないと分光測定が出来なかったのが、ファイバー1本を適当に設置すれば、それなりのスペクトルが手頃に測定できる。また、値段も分光器としては画期的に安価なものである。
とはいえ、一家に一台というほどは安くはなく、高等学校の課題研究などで必要だからといって気軽に購入出来るものでもない。ところで、USB2000は1次元CCDアレイを使っているけれど、そこらへんに転がっているデジカメは2次元の受光素子を使っているので、適当な回折素子を使ってやれば、撮像素子上にスペクトル線を結像することは不可能ではない。単純には直視型の分光器をカメラレンズの前に置けばよいのである。そうやって撮像した画像を適当なソフトで処理して数値化すれば、スペクトルを描ける。 写真は、スペクトル写真を撮影するのに使ったシステム。光源は顕微鏡用のタングステンランプを用いている。普通の白熱球を使えば問題はない。分光器は、透過型の回折格子レプリカを使っている。入射スリットは黒い粘着テープを使って作っている。内部には凸レンズを一枚入れていて、回折格子にはなるべく平行に光が照射されるようにしている。 これで撮影した写真は、少し前の色つきシャボン玉のとおなじだけれど、再度アップすると という感じになる。これに、たとえば、緑のセロファンを入れてみると、スペクトルは と変化する。 ImageJは生物系を主眼にしたフリーの画像解析ソフトらしいのだけれど、とりあえず、これを引っ張ってきて、そして画像を読み込んで、適当な領域を長方形で選択してPlot Profileを選ぶと のような窓が開き、そして、保存すると数値データが入ったファイルが作られる。 ところで、この状態だと横軸はピクセル数で波長ではない。横軸を波長にするためには、いくつかの基準波長を発する光源のスペクトルをとって、ピクセル数と波長の関係を求める必要がある。基準波長を発する光源としては、殺菌灯が入手性がよい(ただし、強力な紫外線を出しているので裸眼で見ないように注意すること。また、あまり皮膚に光をあてないこと)。殺菌灯のスペクトルを同じシステムで撮影すると となる。Net上で少し探せば、これらがどの波長の輝線に対応するかが分かるので、それをもとに、直線補間で取り敢えずの対応付けを行う。 ImageJで数値化したデータをエクセルで読み込んで、セロファンを入れたときのデータを何も入れていないデータで割ってみると、一応はスペクトルらしき物の図となる。 もちろん、USB2000などで測定するのに比べると、かんり問題はある。せいぜい10%程度の透過光量までしか測れていないようだし、530nmと570nmあたりに、妙な構造が出ている。これらは、ImajeJのプロファイルでコブの山が出来ているのに対応しているようだ。 というわけで、まだまだ改良は必要だけれど、デジタルカメラさえあれば、一応のスペクトル測定は出来るようである。
by zam20f2
| 2010-08-15 18:30
| 科学系
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Comments(2)
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by
smectic_g
at 2010-08-17 21:58
x
RAW現像ソフトを信用するなら、素直にモノクロ画像として画像を出力してそのあとImageJで処理すればよろしいのでは?
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zam20f2 at 2010-08-18 08:11
コメント有難うございます。確かに、モノクロ画像にして処理すれば、妙な構造はなくなるだろうと思います。
ただ、できたら、rawファイルのままImajeJに持ち込むことを考えています。というのは 1,rawから画像ファイルへの変換は(画像ファイルの形式によらず)線形ではないので、画像ファイルの値で割り算するとスペクトルが歪む 2,一部の画像ファイルを除いて8ビットなので、rawで処理するのにくらべてダイナミックレンジが悪くなる 3,E3のrawをステライメージの試用版で見て気がついたのですが、画像ファイルでは暗くなっている赤外よりの部分がrawでは値を持っているようなので、rawの方が視感度の悪いところのデータを有効に使える という利点があるからです。ステライメージの製品版を入手すれば、すぐにでもどうにかなりそうなのですが(試用版だと、ImageJで読み込めるかたちでセーブできない)、まあ、それは最終手段と思っています。
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