ボールは戻ってくる?のトリックを考える

また、「大科学実験」を見てしまいました。見ると不満が出るだろうとは思っていたのですけれど、つい番組欄で見つけて、録画予約をしてしまいました。

今回の実験は定速走行するトラックの荷台後方から鉛直方向にボールを発射し、それが、発射器の周辺に取り付けた網の中に戻ってくるかというものです。
時速50kmで実験を行うも、空気の抵抗があるため戻ってこず、その後時速10kmまで速度を落としましたけれど、結局ボールの捕集には成功しませんでした。
ここで、時速40kmの追い風が吹いてきたとのアナウンスの後、時速40kmでの実験が再度行われて、ボールの捕集に成功して番組は終了となりました。
このように記すと、問題はなさそうなのだけれど、捕集に成功した実験で、トラックに着けられていた旗は後方に勢いよくはためいていたのです……………
えーと、時速40kmの追い風の中を時速40kmで走っていたら、旗は勢いよくは後方にはためかないと思うのですけれど…………………………。ちなみに時速40kmというと、秒速10mを越えます。秒速10mというと、どうも、屋外の作業を止めた方がよい強風らしいので、本来なら、撮影をしている場合ではないかもしれません。



さて、ここで問題です、旗が勢いよく後方にはためいていたのに、何故実験は成功したのでしょうか?
最初に考えたことは、成功した実験では、ボールを完全に鉛直方向にではなく、少し前方に打ち出すように改造したのではないかということです。
これは一つの仮説ですから、この仮説が妥当であるかを検証する必要があります。もしこの仮説が正しければ、成功した実験では、ボールの水平方向の初速度は40km+αKmとなるため、失敗実験での40kmよりボールは遠方に飛んでいることが期待出来ます。
幸い、録画してあるので、画面を静止してボールの飛距離を物差しで画面上で測定しました。その結果分かったことは失敗実験での飛距離を1とすると成功実験の飛距離は85%程度であるということでした。
この結果は2つのことを否定しています。一点目はボールを前方の打ち出すような細工をしたという仮説からの予想とは逆の結果であるため、この仮説は否定されます。2点目に否定されるのは、成功実験が追い風で行われたという番組での主張です。というのは、追い風が強ければ、ボールの飛距離は伸びるべきであるからです。

ボールが失敗実験より飛距離が出ていないことから、成功実験ではボールを発射した時のトラックの速度は40kmより遅くなっていたと考えられます。しかし、時速10kmでもボールの捕集に失敗しているので、この時点での速度の低下は実験成功の鍵ではありません。そして、追い風ですらないことを考えると、残された可能性は
1,慣性の法則が間違っていて、ボールには発射されたところに戻ろうとする性質がある。
2,トラックの速度がボール発射後に低下した
のいずれかでしょう。
大科学実験のスタッフの方々は2の可能性を否定するでしょうから、かれらは慣性の法則が間違っていると主張していることになると思います。
私は…自分で実験はしていませんが、慣性の法則の方を信じるので、トラックの速度が低下しただろうと考えることにします。

私だったら、トラックの上の旗は無くすようにすると思います。そうすれば、上のようなトリックに気がつくのが困難になるからです。
でも、実はNHKのスタッフは、旗が後方にはためくと自己矛盾が生じるのを承知の上で、旗を立てたのかもしれません。というのは、大科学実験は私の見ている回は突っ込みどころ満載の科学に対する誤解を増進するような内容と思われる番組なのですが、あるいは、スタッフは、あえて突っ込みどころを入れて、人々に批判的に番組を見ることを学ばせようとしているのではないかという気もするのです。
そう考えないことには、公共放送と称するもので、無意味に予算を使って、あんな番組を垂れ流すことの名目が立たないですからね。


※2011年7月追記
2011年の再放送では、最後の部分が少し変わっていた。時速40kmの追い風という言葉が、単なる追い風という言葉になった。何しろ、時速40kmの追い風なら、成功場面で旗が前方にいきおいよくはためくことはないはずで、画像から一瞬に分かる嘘は言わないことにしたのだろう。前の録画を消してしまっているので、それ以外の変化があるかは分からないけれど、見た人からクレームがあって、それに対処したようだ。けれど、これじゃ、都合の悪い部分を隠しているだけで、列車を穴に埋めて、事故などなかったように振る舞う行為である。根本的に、反科学的な人々がこの番組を作っていることが、改めて示された改変だ。
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by zam20f2 | 2010-12-31 19:15 | 科学系 | Comments(0)
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