・薬品の取り扱い時にはゴムやプラスチックの手袋をして、薬品が皮膚につかないように注意して下さい。
・風通しのよい場所で作業して、蒸気を吸い込まないように注意して下さい。
・薬品の保存は要冷蔵の物であっても、食品と一緒の冷蔵庫には入れないで下さい。
MBBA(N-(4-Methoxybenzylidene)-4-butylaniline)は、前にも記したように、最初の室温液晶です。もちろん、石けんなど、溶液型(ライオトロピック)の液晶になる物は、その前からあったとは思いますが、室温でネマチック液晶となることを意識して合成された化合物はMBBAが最初だと思います。
MBBAは1969年にKelkerとScheurleによる論文(A Liquid-crystaline (Nematic) Phae with a particularly low solidification Point, Angwvande Chemie, International Edition Vol.8, 884(1969)で報告されました。
液晶表示デバイスが発表されたのは1960年代の中頃です。RCAのグループによってデモンストレーションされた最初の液晶ディスプレイは、液晶になる温度が80℃程度以上の物が使われていたようです。それを液晶状態にして使っていたわけですから、文字通りホットな表示装置だったのです。さすがに、それでは実用性がないので、室温で液晶となる物質を探す努力がそれから始まり、そして、69年になって初めて室温で液晶になる物質が報告されたのです。
Kelkerらの論文ではMBBAは20~41℃で可逆的にネマチック液晶になると記されています。MBBAのネマチック相-等方相転移温度は論文によりかなり幅があり、48、47.3、47、45.9、45.8と様々な値が報告されています。同じ物質なのに、これだけ報告が分裂するのは、MBBAが空気中の水分によって容易に加水分解し、その劣化により転移温度が低下するためです。このように、報告された転移温度がばらつく場合は、高めの方が正しい可能性が高いことが多いように思います。
MBBAは誘電率の異方性の符号が負であるという特徴があります(確かそのはずです)。このため、いわゆるTN型の液晶表示を作る場合にはMBBAは使えません。また、上にも記したように劣化も早いのですが、何と言っても、液晶になる化合物としては、安価なものです(そう言っても、25gで5400円します)。もし、TN型の液晶セルを作ってみたいのでしたら、MBBAではなく4-Cyano-4'-pentylbiphenyl(5CB)を使う方が良いでしょう。但し値段は1g5100円で、25gパッケージだと5万円です。TNセルを作るだけでしたら、1gで大丈夫だと思いますが、今回はTNセルを作るつもりはないし、混ぜ物をして遊びたかったので、MBBAを選んでいます。
MBBAの瓶の裏側をみると、安全に関する注意が記してあります。
皮膚刺激と重篤な目への刺激性の2項目が記されています。取り扱いには十分に注意して下さい