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注意事項

これから、反射幻灯機だけでなく、光や音について実験をする道具や望遠鏡など、いろいろなものをつくります。そのとき、つぎのようなことを、しっかりまもってください。
一、なるべくひとりでなくて、いく人かの友だちと力をあわせて、つくること。
二、まず、みんなで、たんねんに、せつめい文をよくよむこと。
三、つくろうとするものが、どのようなものか、よくわかったら、そのせっけい図を、せいかくにつくること。
四、きりだし、じょうぎ、えんぴつなど、ひつような道具を、まわりに、きちんとそろえておくこと。
五、材料がそろったら、せっけい図をみながら、まず、どこからどのようにはじめていくか、じゅんじょをきめること。
六、どんなにこまかいところでも、いいかげんにしないで、一ミリメートルの十分の一もくるいのないように、注意ぶかくつくっていくこと。もし、すこししっぱいしたからといって、その材料をやぶいたり、すてたりしないで、しっぱいしたわけをしらべ、しっぱいしたところを、なおしてつかうくふうをすること。
七、できあがりをいそがないこと。いそいでやると、かならず、とりかえしのつかないような、大きなしっぱいをします。たとえ、形はできても、つかいものにならないものになります。みんながよろこぶもの、みんなにみせてもはずかしくないものをつくるには、あせらずに、注意ぶかく、時間をかけてつくることです。
八、この本にかいてあるものが、もっともよいもの、とはかぎりません。さらによいもの、かんたんにつくれるものに、くふうし、改良していってください。そして、改良したものを、ほかの友だちにもつくるようにすすめてください。
九、どんなものをつくるときでも、きろくをとるしゅうかんをつけること。とくに、しっぱいしたことのきろくは、友だちにおしえるときに、やくにたちます。
十、こうして、一つのものができあがったら、それにまんぞくしないで、さらにふくざつなものをつくるように、くふうしてください。たとえば、この幻灯反射機ができたら、こんどはレンズを二枚くみあわせるとか、もっと画面を大きくするなど、改良しなければならないことが、たくさん発見されてきます。

これは、昭和29年のアルス日本児童文庫 21 光と音の研究に記されている文言です。
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見ておわかりのように、著者は読者が本を読んで実際に物をつくることを前提にこの本を記しています。そして、それも、その場限りで書かれた通りにものを作るのではなく、自分で考えてつくって、さらに改良することまで推められているわけです。
この部分を読んで、最近の小学生向けの科学の本で、このような注意事項を記した物があるのかを考えてしまいました。実際に調べているわけではないのではありますが、勝手な印象として、もっと手軽な、ハウツー的な物やあるいは、読者は消費者で見るだけのような方向の本が多いのではないかという気がしているのです。これは、しばらく前から、「大科学実験」と「たのしい科学」を見ながら感じていることでもあるのですが、この50年ほどの間で、世の中が便利になって、考えずに物事が出来るようになったことに加えて、大人の方も、子どもを消費者として扱うような方向性が強くなりすぎているような気がしています。
by zam20f2 | 2011-03-03 07:59 | 科学系 | Comments(0)
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