にわか地震談義(3)

今後、東京で3月11日以上の揺れを感じる地震のタイプとしては、
1,11日の地震の余震域で生じる余震
2,余震域以外だけれども、11日の地震に誘発された可能性のある地震
3,まったく独立なもの
の3つに区分できる。この中で3については当面は考える必要がない。というのは、今回の地震が太平洋プレートと北米プレート間で起こった以上は、日本の北米プレート内で生じる地震は当面は2に区分されることになる。というわけで、3の地震とはユーラシアプレートと北米プレートとの境界と思われているフォッサマグナより遙かに西の地方での地震になる。西のほうで目を引く大断層に中央構造線があるけれども、中央構造線が四国で大きく動いてM8以上の地震を引き起こしたとしても、伊方原発が崩壊することはあっても、東京の揺れは今回以下になる。

さて、続いて1を検討することにしよう。多くの地震学者の指摘によれば、最大マグニチュード-1程度の余震が発生する可能性がある。つまり、M8クラスの地震が生じる可能性があるということだ。一つの可能性として、今回の震源の東方が指摘されている。今回の地震の後で、断層をはさんで海側では太平洋プレートに、陸側では北米プレートに張力がかかるようになっているようだ。その海側が耐えきれずに破断するとM8クラスが起こる可能性があるという。この地震は大きな津波被害をもたらす可能性があるけれども、揺れという点では東京には影響を及ぼさないので考えなくてよい。
ちなみに、朝日の記事によると1ヶ月以内にも起こる可能性があるという話なのだけれど、類似例として示されているのが、明治三陸地震の後の昭和三陸地震で、その間は37年開いている。1ヶ月から37年かそれ以上の間と言われてしまうと、言われた身としては途方にくれる気もする。

話はそれるが、これまで日本海溝付近の海底に正断層が多く見られるのは、太平洋プレートの沈み込みがスムーズであるために、沈み込みに従ってプレートが曲がったときにプレート正面に引っ張り力が働くためと考えられていたようである。しかし、今回の地震で明らかになったことは、正断層の成因は、1000年に一度規模の逆断層運動の行きすぎによる張力の発生であったということである。4月11日の余震では陸地部の井戸沢断層が動いが、これも正断層で陸地側では張力が働いている。この井戸沢断層は東電による原発の地震評価でも対象となっており、動きは確認されているが、まさか、動きのメカニズムが大地震に連動するものとは誰も思っていなかっただろう。

断層の陸地側でも井戸沢断層のような動きが生じる可能性がある。その中で一番問題になるのは仙台市内を走る長町-利府断層である。これが動くと仙台直下型地震となる。まあ、この断層は一応は逆断層ということになっているので、多分除外して考えて良さそうである(ただし、井戸沢断層も今までは正断層ではなく横ずれ断層とされていたので油断はできない可能性はある。誰も考えたことはないと思うが、長期には逆断層だけれど、ある一瞬は逆断層が反対側に動くという可能性は、否定はしきれない。何しろ、断層は正断層であろうと逆断層であろうと、周辺よりは応力に弱くなっているのだから)。また、相馬あたりの浪江活動セグメントも逆断層ではあるけれども、存在が気になるところである。あと、張力がはたらいているあたりの正断層と横ずれ断層には、二ッ箭、湯ノ岳、三郡森、原町などがある(産総研活断層DB)ただし、いずれの場合も、震源は東京からは離れており、福島の原発がさらなる被害を受けることはあっても(心底あって欲しくないことだけれど)東京が3月11日以上の揺れになる可能性はない。

続いて、断層の南北方向の余震の可能性を考えてみよう。2004年のインドネシアの地震でも、余震は断層線に沿った方向で生じている。これは、考えてみるまでもなく、当たり前のことである。

地球の表面近傍の食い違いは断層と呼ばれているけれど、結晶の中で食い違いがあると転位と呼ばれている。転位の特徴の一つに、転位線は結晶表面や他の欠陥部分が末端になる以外はずっと続いているという物がある。結晶は、周期的な粒子の並びがあり、それから要請されることがらないので、転位の話を断層に直接は持ち込めないけれども、断層が動いて歪みを解放したときに、断層の末端付近には歪みが生じている。もちろん、一回の断層の動きだけなら、末端の歪みの量はすくなく問題がないけれども、断層の中心部が何度も動いたら末端の歪みは累積されていき、そこも断層とならざるをえない。つまり、長い年代動き続けている断層は、どんどん長くならなければならないはずである。そのような断層の一部が動いたら、その両側の部分は、歪みが増加するために、その後に破断する可能性は高くなっているはずである。

びんたぎれさんによると、断層の動きが止まった側で最大余震が発生する傾向があるという。これは、考えてみれば自然なことでる。というのは、破壊点は歪みの蓄積がもっとも大きかった場所付近である可能性が高い。そして何で歪みがもっとも大きくなっているかというと、前の地震で隣接領域の歪みが解放されて、その結果として力のバランスが崩れてしまっているからである。

3月11日より前の大地の動きを見ていると、宮城沖から房総に掛けて、日本列島は西方に移動さいているのに対して(この図を知りながら、なんで多くの地震学者は、太平洋プレートが摩擦なく沈み込むという、どう考えても正しくない描像を信じていたのだろう)岩手から青森沖では殆ど西方に移動していない。このことには二つの解釈の可能性がある。一点目は岩手から青森沖は地震学者が信じていたように太平洋プレートが低摩擦で沈み込んでいる。もちろん、これは間違っている。というのは岩手沖では大きな海溝型地震が明治と昭和に生じているからである。そうなると二つ目の正しい可能性は、明治三陸自身で陸側プレートが東方に移動して陸側に張力が働くようになった影響が未だに残っているとなる。個人的な印象だけれども、明治三陸地震のM8.5は過小評価だろう。今回の地震でも周期の関係で気象庁震度の割に倒壊建物が少なかったようだ。それと同じで、明治三陸地震も周期の関係で揺れによる被害は少なかった可能性がある。

というわけで、岩手側は現時点で歪みの蓄積は少なく、余震を起こす必然がない。今回の地震の断層が北の方で何故止まったかについての解説を、新聞やTVニュースでは見たことがないけれども、明治三陸地震での歪みの解放が原因だと思っている(そうなると、本当は明治三陸地震の時に、今回の宮城沖まで何で破断が拡がらなかったかを説明しないといけないのであるが…)。東北大の先生は、今回の震源域の南北どちら側でもM8クラスの余震があり得ると言っているらしいが、ここでは、素人らしいきっぱりさで北はないと言うことにする。

一方の南側、千葉から房総沖は地震前は西方に移動しており、歪みはきちんと蓄積された状態にある。というわけで、茨城南部から房総沖でM8余震の可能性は十分にある。

とはいえ、地震学者の中でこの領域でどんな地震が起こりうるかを自信を持ってはなせる人はいないのではないかと思う。なにしろ、このあたりは北米プレートの下にフィリピン海プレートが潜り込んで、さらにその下に太平洋プレートが潜り込んでいると考えられている領域なのである。これが、駿河湾から四国にかけてのように、二つのプレート間のみの話なら、見てきたようなことを話す人々もいるわけだけれども。

びんたぎれさんはWebの中で、断層が太平洋プレート・北米プレート・フィリピン海プレートの会合点を超えて房総側に到達すりかもしれないと記している。どうみても本業の方が、そう記す以上は何らかの理由があるはずなのだけれど、それを理解するためには、北米プレートとフィリピン海プレートの相対運動を自分なりに理解しないといけない。

房総沖でM8が起これば東京の揺れは3月11日以上になるだろうから、この点は早急に考えないといけないのだけれど、理解が足りていない(まあ、床屋談義以下なので無理解の上の議論だけれど、あまりにも知識がないと勝手なことさえ言えなくなる)。文章も長くなったので、房総沖は棚上げして、新たなエントリーで誘発地震を先に考えることにする。
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by zam20f2 | 2011-04-14 21:44 | 科学系 | Comments(0)
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