にわか地震談義(4)

今回の地震で北米プレート(というか、どうも、最近の流行ではオホーツクプレートらしい…)が急激に動いたわけだけれど、それにともなって、震源領域以外でも、北米プレートの境界と内部で地震が生じる可能性がある。まず、プレート境界から考えることにしよう。北米プレートとユーラシアプレートの境界は、かつては日高山脈と考えられていたけれども、現在は静岡-糸魚川構造線付近というのが主流になっている。北米プレートが随分と細長く伸びている印象があるのだけれど、今回の地震以降で日高山脈付近では地震は誘発されておらず、フォッサマグナあたりでは誘発されているようなので、確かに静岡-糸魚川構造線が妥当であるように感じられる。北米プレートが北側に底辺を持つ三角形の形状で南西に伸びていて、その途中が変動を起こした後では、先端の細い側でより大きな影響がでると考えるのが自然である。もし、日高山脈が境界なら、ユーラシアプレートが北海道側に伸びていることになり、北海道側で地震が誘発されるべきである。

今回の地震が生じた後で、発作的に思ったのは、牛伏寺断層が動くであろうということ。この断層は松本あたりを走っていて、ここ1000年動いていない。貞観地震からのタイミングといい、これは、連動して動くしかないよねと考えたわけである。もう少し大きな範囲で言うなら、今回の地震の影響で、フォッサマグナが動くと思ったわけだ。そんな頭の中だったので、富士宮で地震が起きた瞬間には、フォッサマグナが動き始めたと思ったのだけれど、富士宮の地震は横ずれではなく、逆断層だし、また位置も少し東方過ぎる。また、牛伏寺断層を初めとして茅野断層などは、左横ずれ断層なのだけれど、そうだとしたら東日本が西日本に対して北上する動きで生じることになる。今回の地震によるフォッサマグナ付近の変動は僅かである上に、左ずれを増やす方向には働いていない。こう考えると、ユーラシアプレートとの境界の地震が即座に誘発されないはなさそうである。
一方、これまで牛伏寺断層などに対して圧縮力が働いていたのが僅かではあるが緩和される方向に動いていることを考えると、地震が誘発されるという議論も可能である。ご存知のように摩擦力は界面の摩擦係数と界面に垂直な力で定まっている。今回の地震により垂直な力が弱まったなら、断層の摩擦力は低下して、現在の歪みに耐えられなくなり動く可能性がある。この考え方が正しいとすれば、牛伏寺断層が動いたとしても、その動きは今回の地震がなかった場合よりも小さなマグニチュードで動くことになり、ある意味では目出度いことかもしれない。断層に対する圧縮応力の低減がどの程度であるかを判断するためには、牛伏寺断層を挟んでの3月11日の地震による移動量の差分が欲しくなる。探せばあるだろうけれど、根性無しなので、ここでは言いっぱなしにする。

ところで、牛伏寺断層が実際に動いたとしても、それが今回の地震の影響なのかどうかは検証不可能だろうと思う。今回の地震と独立な動きであるかの検証をしようにも、牛伏寺断層のこれまでの動きと今回と同様の地震の動きの相関が証明されるか、連動する機構の論理的な説明がなされない限りは、連動したとする言明を疑似科学と区別することは不可能であろうと思う。

ちなみに、米国で開催されている地震の国際会議で、M9クラスの超巨大地震が連続して発生する活動期である可能性が主張されたらしいが、この言明は、科学的言明の基準を満たしていないように思える。というのは、今後M9クラスが当面発生していなくても、3つもあるから活動期と言われればそれまでだし、生じた場合もそれが確率的な揺らぎの範囲で説明つくのかは、高い信頼性を持っては計算出来そうにないからである。だいたい、活動期と言われたって、それから何か新しい科学的な知見が得られるわけではない。つまり、科学的な仮説としても、まったく無意味なものなのである。これは、いかに先端の統計手法などを使っていたとしても近代科学ではなく博物学である。


北米プレートとユーラシアプレート間の牛伏寺断層が動いても、東京が大きな揺れに見舞われることはない。一方、北米プレートとフィリピン海プレートの間が動くと、東京は今回以上の揺れに見舞われる可能性がある。北米プレートとフィリピン海プレートの間の動きとは、相模灘での逆断層による地震である。このタイプの地震の直近のものは大正関東地震(関東大震災)で、その前は元禄関東地震である。両者を比べると元禄関東地震の方が活断層がより南方まで活動しており、規模が大きかった。大正関東地震からは、ほぼ90年の年月が経過しているが、房総半島の海岸段丘の検討からは、大正関東タイプの周期は約400年程度で、元禄タイプは2000年以上と見積もられている。別の言い方をすると、貞観地震の時に元禄タイプは生じていないということである。

これらの地震の周期と、関東・元禄地震からの年代を考えると、今回の地震により、これらの地震が誘発される可能性は考えなくて良いだろう。


ところで、関東タイプの地震に比べて元禄タイプの地震は何故周期が6倍もあるのだろうか。両者の違いは断層運動が房総沖の海底まで伸びるかである。地震学者なら、房総沖の方が相模灘に比べて固着が弱く歪みの蓄積係数が少ないためと主張するのではないかと思うが、個人的には、フィリピン海プレートの動きが房総沖の方が相模灘より有意に遅いためではないかと思う。実際、 関東地震の再来周期によると、駿河湾ではフィリピン海プレートの動きは4cm/年であるのに、相模灘は2.7cm/年とされている。勝手な推測では、房総沖のフィリピン海プレート部分は側面から太平洋プレートの潜り込みを受けている。二つのプレート間には摩擦が働くため、他の部分よりは速度が遅くなっている。プレート内部で移動速度の不均一があると、プレート内に裂け目が生じなければならない。裂け目があれば、そこから染みだしが起きる。伊豆諸島である。標準的な説明では伊豆諸島は太平洋プレートの潜り込みにより生じる火山フロントということになる。海溝から火山フロントまでの距離が短いのは、プレートの性質によると説明されているとは思うけれども、今現在のタイミングなら、標準外の事を言い放っても、誰も否定は出来ないのではないかと思っている。まあ、それ以前に、こんなところに何を書いても、本業の学者さんに相手にされる心配はないわけだけれども。

元禄関東地震から大正関東地震までの間隔が平均繰り返し周期より短いことが指摘されている。この理由は、比較的容易に推測できる。今回の地震後に陸地側が通常の圧縮とはことなる張力になったのと同様に、元禄型地震により相模灘から房総沖まで定常的な歪み方向と逆方向の歪みが生じ他はずである。その後、相模湾側は房総側に比べて迅速に歪みの蓄積が生じたのだけれど、房総側が通常とは逆応力になっているために、相模側が通常より小さな歪みでも、断層線にそって破断開始に十分な歪みが生じたのである。この考えに従えば、大正関東タイプの地震の発生周期は元禄関東タイプが生じた直後は短い(かつマグニチュードは小さめだ)が、だんだんと周期が延びてきて、そして、2400年ごとぐらいに、房総沖まで一気に断層運動が起こることになる。

というわけで、取り敢えずは、今回の地震の影響により北米プレートとユーラシアプレート間に生じる地震はあるかもしれないけれど、東京は揺れない。北米プレートとフィリピン海プレート間の地震は誘発されないというのが、当面の結論である。
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by zam20f2 | 2011-04-18 21:05 | 科学系 | Comments(0)
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