内田洋行英式烏口

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手前から赤ケント、細線用、青ケントの烏口。英式烏口文廻を出したときに、烏口の方が製図ペンより綺麗な線を引けるという話を出したけれど、その話をしてくれたデザイナーも、今は液晶ディスプレイの上で線を引いていると思う。烏口は、製図ペンにより、製図ペンはPCにより主な役割を終えた。こうしたシフトはかなり急速に起こったため、文房具屋のデッドストックになっているものが結構ある。
もっとも、ここに上げた品は現行商品で、内田洋行のWebには信じられないほど高い値段で掲載されている。でも、どう考えても、それらは、内田洋行のデッドストックで新品の製造は行われていない。実際、カタログの品ぞろえは年とともに寂しくなる傾向がある。柄に象牙を使っている烏口など、21世紀になって製造している筈はない。
写真の赤ケントと青ケントでは、刃先の材質が違う。両者とも、普通の品よりは高級品なのだと思うけれど、赤ケントはステンレス鋼、青ケントはハイスピード鋼を使っている。ハイスピード鋼とは(私の理解では)硬度と高温耐性の高い刃物鋼で、これで、旋盤のバイトなどを作ると、通常の鋼のバイトより、早い回転数(高速)での加工が可能となるもの。もっとも、今は旋盤などのバイトも、超硬合金のチップを取り付けるのが主流で、ハイスピード鋼なんて言葉も使われなくなっているだろうと思う。
さて、烏口になんでハイスピード鋼なんかを使うかというと、その方が研ぐ間隔が延びるからである。それは、まさに包丁などでも硬い鋼の方が(研ぐには手間がかかるけれど)刃の持ちがよいのと同じ理由。
そういえば、製図ペンのペン先にも、磨耗性能のよい合金やら、宝石を使った物もあった。それは手書き用ではなく、機械式のプロッタで製図フィルムに図面を描く用途向けのものだった。なので、あこがれたけれど、さすがに持っていない。
真ん中のものは細線用。普通の炭素鋼のもあるけれど、これはハイスピード鋼のもの、三つの中で定価は一番高い。
どこかの町の文房具屋で、青ケントや赤ケントの烏口を見つけたら、ちょっと値段を聞いてみても良いかもしれない。定価が戻ってきたら、そのまま礼をいって立ち去ればよい。その品が店が売れる見込みがなく、興味を持ってくれる人の手に渡る方が物にとっても幸せだと店の人がわかっているなら、かなり値引いてくれると思う。そのときは保護して手元においておくのは悪くない。実際に使ってみることはないかもしれないけれど、実用的な工芸品を眺めるのも悪くないものだ。
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by zam20f2 | 2011-06-19 08:19 | 物系 | Comments(0)
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