数%の神

ヒッグス粒子が世の中に出回っている。何しろ重さのあるところにはそこら中で徘徊しているわけだから、そこら中にいるはずなのだけれど、突然に言葉として出回るようになった。ニュース番組でもヒッグス粒子が取り上げられ、「電磁気現象の発見が今日の私たちの生活を発展させたのと同じように、この発見が…」などというコメントもなされていたような気がする(あまり真剣に聞いていなかったので違うかもしれないけれど)。
素粒子物理をやるべき理由として、たまに将来に技術的な応用可能性が主張されることがある。そして、その時には電気現象が引き合いに出されることが多い。19世紀に電磁現象を役に立つとは思えないと言った政治家がいたらしいのだけれど、それを引き合いに出して、その人物の二の舞になりたいのかと脅すわけである。
現在の素粒子実験には莫大な金が必要なのは事実だし、それがなければ研究が進まないので、お金を出させるために口が滑ってしまうという事情は分からないでもない。しかし、少しでも物理学的な知識を持った人ならば、電磁気現象のエネルギーは人類が扱うのには手頃なレベルであるのに対して、素粒子反応に関わるエネルギーは、現在の人類が扱うのには巨大過ぎるものだということは分かって頂けると思う。現在の人類には、それを安定して制御するすべの持ち合わせなどはまったくない。
もし、素粒子反応の応用を真剣に考えるのなら、それ以前に原子核反応の制御を完璧にこなせていないと駄目だろうと思う。少なくとも、放射性廃棄物を安全に処理する技術を開発しておかなければならないだろう。だって、10万年も地中にうめておくなんていう正気とは思えない解決策じゃなくて。もちろん、それができても、素粒子反応を扱うのには、さらなる技術が必要とはなるだろうけれど。
というわけで、個人的には素粒子反応の応用可能性故に、素粒子物理に研究資金を投入するのはナンセンスだと思う。そんな金があったら、放射性物質を安全に処理することに金をつぎ込んだ方がよい。そちらの方が、はるかに人にとって差し迫った問題なのだから。

ところで、ヒッグス粒子は「神の粒子」と呼ばれているらしいのだけれど、ニュースで聞いた話によると、ヒッグス粒子により説明できるのは宇宙の質量の数%程度で残りの9割以上は説明できないらしい。数%しか説明できない神とは、どうも、あまりたいしたことのない神さまのようだ。どうりでパンダの出産ニュースに吹き飛ばされそうなわけだ。
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by ZAM20F2 | 2012-07-05 21:22 | 文系 | Comments(0)
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