色度図と3原色

コンピュータディスプレイの浸透に伴って、XYZの色度図が多くの人の目に触れるようになってきた。メーカーは、sRGBより色域の広いAdobeRGB対応などを謳っており、謳うだけでは不充分と思うのか、色度図の中にsRGBの小さめの三角とAdobeRGBの大きめの三角を重ねて示したりしている。
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何気なくカタログ等に掲載されている色度図であるけれども、色度図を眺めていると、加色混合において三原色ではすべての色を再現できないことに気がつかされる。sRGBやAdobeRGBの色域を見ると、色度図上の3つの点(いわゆるRGBの三原色、ただし、色純度は必ずしも高くない)の色を使うと、その3つの点で構成される三角形の内部の色を再現できることが示されている。逆に言えば、三角形の外側の色は再現できないのである。AdobeRGBの方がsRGBより基準となる点が外側にあり、三角形の面積が大きい。これが、AdobeRGBの方が再現できる色が多いと言われるゆえんである。しかし、AdobeRGBの基準点も色度図の馬蹄形の外周よりはだいぶ内側にあることは確かで、馬蹄形の線上に基準点をとれば、AdobeRGBでは再現できない色も再現できるようになる。
ここで、問題になるのは馬蹄形が外に凸な曲線であることだ。このため、馬蹄形上の任意の3点を取って三角形を作っても、その外側の領域が必ず存在してしまう。これは、どこの3点を定めても事情は変わらない。三原色で色を再現できるというのは、あくまでも近似的な話であって、科学的な意味では真ではない言明なのである。

それにも関わらず、三原色による色再現が普通に行われて来たのは、個人的な考えだけれども、世界には色純度の高い(馬蹄形のそばにある)色があまりないことと、人には絶対音感ならぬ絶対色感がないために、多少の濁ったいろでもそれらしく見えてしまうためではないかと思っている。

後者はともかく、前者は測定可能な話で、実際にディスプレイメーカーなどは、世の中にある色の座標値を計って、世の中の色のどの程度がディスプレイできちんと表現できるかなんていう研究もやっているようだ。で、その研究結果のうろ覚えの内容によると、結構多くの色が今のディスプレイで再現できているらしい。馬蹄形の線の部分はいわゆるスペクトル色といわれる領域なので、それこそ、虹なんかはディスプレイでは再現できない(とりあえず、虹の色がスペクトル色ではないという議論は置いておいてだけれど)ように思えてしまうけれど、実際には、背景の明るさが加わって色純度が落ちており純粋なスペクトル色ではなくなっているのだろうと思う。あるメーカーの研究では、世の中の色でビビッドな黄色系が現在のディスプレイでは弱いということで、4番目の色画素として黄色を加えたテレビを販売したけれど、爆発的ヒットにも主流にもなっていないところを見ると、人々の色再現に対する要求レベルは必ずしも高くないように思える。

色が数値で示されて、その間で加算性が成り立つというと、色が見えることの神秘性を感じるような人からは文句が来てしまいそうだけれど、少なくとも、このレベルの科学は還元主義の上に成立しており、そして、色が座標で表されることが、現在のディスプレイ技術の一つの基盤となっているのだから、三原色なんていう誤解を招く言葉ではなく、広い色範囲を再現できる3つの色程度の言い方の方がよいように思う。

もちろん、人間の目には色順応なんて現象もあるわけで、色座標で色の見え方のすべてが説明できているわけではない。しかし、人間の錐体が3種類の感光領域(それは、決して単純にRGBに対応するものではない)を持っていることを考えると、色座標があった上で、色順応はソフトウエア上の修正として考えるべき問題になるのだろうと思う(そのときにはXYZの感度分布より、人間の目の錐体の感度分布に対する関数とした方が都合は良いだろうけれども、それは、線形変換でどうにかなる話だろうと思う。)

世界には、色純度が高く三角形の外側にいく色があまりないと記したけれども、科学教室で行われる簡易分光器を通して見られる色は(正確には分光器の分解能に依存するけれども)スペクトル色に近く、日常の色よりは鮮やなはずだ。だから、科学教育をやっている多くの人は、三原色では再現できない色を自分の目で見たことがあるはずだ。ディスプレイで、三つの色で色再現を行っているので、その原理を伝えるのには意味があると思う。だけど、それと同時に、その外側にも色があることを伝えて置くのも必要な事だろうと思う。
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by ZAM20F2 | 2012-07-28 20:11 | 科学系 | Comments(0)
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