解説の功罪

だいぶ前に、欧米と極東の島国で科学博物館の展示に違いがあるのではないかという与太話を書いた。久しぶりに訪れた科博の遊べるコーナーでは、非モンゴロイドの子どもが、風で風船を上げて遊んでいたけれども、このくらいの年齢だと、どうやら東アジアの住人とやっていることは変わらず、闇雲に遊んでいるという印象だった。
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それ以外にも、いろんなデモがある
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は加法三原色のデモだけれど、3色とも重ねてしまうのはちょっと珍しい。これは、修学旅行の生徒さんの作品。

そして、こちらのデモ品は、3組のレールがあって、その上を球を一斉に転がすもの。一つは素直な斜面。残り二つは、1箇所、2箇所ほど低くなっている場所がある素直でない斜面。で、どの球が一番速くゴールに到達するかを見るものだった。やってみると、2箇所ほど低くなっている部分があるものが(その部分では球の速度が上がるので)一番早くゴールに到達するのだけれど、その話は後回しにして、この展示を巡る修学旅行生と思われる中学生の行動が面白かった。
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彼らは、低くなっている所にボールをおいて、別のボールを上から転がしてそれにぶつけていた。ぶつかるのを見るまでは、運動量保存則からしてぶつけられたボールは、低くなっているところの終端の斜面を駆け上がって、なにごとも無かったかのようにその先の斜面を転がっていくのだろうと思っていたのだけれど(何しろ、こんなことをしないで1個のボールでやればラクラクと上がっていく斜面なのだ)、かれらの実験結果は否定的で、はじき飛ばされたボールはくぼみから脱出できない。何度か繰り返して、その後に、上から転がすボールを2連にしたら、飛ばされたボールは脱出していた。面白いですね。1個だとはじかれたボールが脱出できないのは、回転運動にもエネルギーを食われているので、並進運動のエネルギーと運動量が足りていないのが原因だろうと思う。中身が凍ったジュースの缶と凍っていないジュースの缶を同じ坂道を転がすと凍ってない缶の方が早く転がるのともつながる話だ。
では、2個のボールで衝突させるとどうして脱出できるのだろうなんてことを考えながら眺めていたら、そのあたりにいたボランティアの説明員がやってきて、中学生らのやっていることを見もしないで、「どっちが早いと思う。それは何故かな」などと説明を始めてしまった。見ながら「いやいや、あんたが説明しようとしているくだらない話より、この子どもたちはよっぽど面白いことをやっているのに、それを止めるなよ」などと心の中で毒づいていたのだけれど、中学生たちは、一通りボランティアの話を聞かされて、興味を失い、他に行ってしまった。

このコーナーの展示、眺めながら、脈絡がないなぁと、ようやく思い至った。外から見ると中に壁があるように見えるような、人が通れる大きさの偏光板を使ったトンネルやら、たたくとリングが飛び上がる磁力のデモとか、車輪を回す角運動量の体験とかあるのだけれど、それぞれが独立している上に、レベルも全く異なっている。こともの発達とか、科学の体系とかを考えて、その中で何をどう伝えていくかのストーリーをたてた上の展示ではなく、単に、一寸面白そうなアイデアの寄せ集めという感じ。これじゃ、大科学実験の発想と同じじゃないかという感じだ。

しかも、ここの展示に比較的安易な種明かしがついている感じだけれど、これは、上の中学生たちじゃないけれども、科学に対する興味を失わせるのに非常に有効に機能している可能性がある。もっと、不思議で更に勉強したいという気持ちにさせてなんぼでしょうが。
例えば、私が上の球を転がす展示の類を作るとしたら、来場者がレールの形を変えられるようにすると思う。最初と最後の高さだけは一定で、途中のレールはどんな形にもできる。ボランティアのおじさんは、低いところでは球の速度が早いから早くゴールに着くと行ったけれど、低いところがあると走行距離は伸びるので、決して単純に早くなるとは言えない。最適地がある(し、それは数学的にきまっているはずだ)。
来場者がレールの形を作って球を転がすと、走行時間が計測され、それが、現在のところで何番目程度の順位なのかが掲示される。これだけで、興味を持つ子は少しでも、よい記録を出すために、いろいろと考えてレールの形状をいじっていくだろう。そしてそれは、安直な種明かしと違って、より深い興味にとつなげられる話だと思う。
だれか、このアイデアを拾って、どっかの科学館に作ってみてくれないかなぁ…。
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by ZAM20F2 | 2013-10-14 08:37 | 文系 | Comments(0)
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