ナマコ骨片のコノスコープ観察

手元にあるナマコの骨片が入っているプレパラート(MWSさん製)には2種類のナマコの骨片が入っている。一つは骨片の謎シリーズとして掲載したもので、マナマコの骨片とのこと。そして、もう一つ車輪のようなものは、ムラサキクルマナマコの骨片だそうだ。マナマコの骨片と一緒にムラサキクルマナマコを写すと、
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のように遙かに複屈折が小さな状態に見える。ステージを回転しても明暗の変化が生じない。一見すると複屈折がない物質で出来ているように見えるのだけれど、回りに存在しているはずの珪藻(こちらはアモルファスシリカだと思う)に比べると明るいということは、本当は複屈折がある物質のはずである。というか、マナマコと同じように炭酸カルシウムで出来ているなら複屈折がなければならない。
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はマナマコとムラサキクルマナマコの骨片をクロスニコル下で撮影したもの。NA0.85の対物レンズを使っているが、ハネノケコンデンサの上玉をはずしているので照明系のNAは小さい。それに対して
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はハネノケコンデンサの上玉を入れた物。上玉を入れると、かなり明るくなるのでシャッター速度を上げてマナマコの方が、ほぼ同一の明るさになるようにしている。すると、先ほどに比べてムラサキクルマナマコの明るさが増している。より斜入射の光成分が増えると明るくなり、ステージを回転しても明暗変化がないとなると、考えられるのは光軸がスライドグラスに垂直になった光学的1軸性物質であるということだ。
 その推測が本当かどうかはコノスコープ観察をすれば分かる。コノスコープ観察をする上で重要なことは、見たい場所だけに照明光が当たるようにすることだ。もし、マナマコの骨片にも光が当たってしまうと、より明るいマナマコの骨片からの光でムラサキクルマナマコによるコノスコープ像は隠されてしまうであろう。まず
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のように、なるべく邪魔な物が視野に入らないようにする。もっとも、デジタルカメラの視野は広くはないので、きちんと接眼をのぞいて確認しないといけない。続いて、視野絞りを絞って、

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のようにムラサキクルマナマコだけに光が当たるようにする。この写真は見やすいように鋭敏色板を入れているが、はずせば
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な状態だ。

ここからベルトランレンズを入れると
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のような十字パターンが見える。これは、まさしく1軸性結晶で光軸が基板に垂直(顕微鏡の光軸に平行)にあるパターンだ。コノスコープでは周辺に行くほどリタデーション量が増える。周辺が僅かに黄色く見ているのは、偏光色の黄色が出はじめているためだ。外周部はちょっと暗くなっていて色が見にくいのだけれど、外周部のリタデーションを500nm程度として、対物のNA0.85を入れて方解石の屈折率データをもとに厚みを見積もると5ミクロン程度となる。プレパラートの作りと併せて、それほど悪くなさそうな数字だ。

さて、骨片が方解石だとすると負の複屈折物質なので、基板垂直方向の屈折率の方が小さいはずである。それを確かめるのには検板を入れてみればよい。少し前の検板のx'とz'の屈折率大小の記事は、実はここで使うのに確認しておきたくてやってみたものだ。
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はλ/4板、
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は鋭敏色板を入れたものだ。鋭敏色板を入れた方が見やすいので、そちらで説明すると、それまで同じ色だった4つの領域が左上から右下方向は水色っぽく、そして左下から右上方向は黄色っぽく変色している。これは、左上から右下がリタデーションが加算的に、左下から右上は減算的に重なったことを意味している。そして、坪井誠太郎先生の「偏光顕微鏡」の第339.2図を見ると、
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これは負の1軸性結晶のパターンであることが記されている。目出度く矛盾なく話がつながったわけである。λ/4の方も左下から右上が暗くなっているので、こちらが減算的な重なりで間違いない。



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by ZAM20F2 | 2014-01-15 21:07 | 顕微系 | Comments(0)
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