地震調査委員会の相模トラフ地震長期予想改訂について:にわか地震談義

 25日に地震調査委員会が相模トラフでのM8級地震の確率を30年以内0.8%から5%に改めた発表を行い、26日の新聞にそれが取り上げられていた。
 これまでの経験によると、地震調査委員会が高い確率を付けた地域では地震は起こらず、低い確率のところで選択的に地震が起きるので、関東地方での発生確率が高く修正されたことは、関東地方の住人にとっては、大変に目出度いことであろうと思う。
 とはいえ、どのような理由に基づいて確率を変更したのかを知りたかったので、調査委員会のWebから発表資料をダウンロードしてざっくりと眺めてみた。

 読んで見てわかったことは、「新たな長期評価手法については検討途上である」ことで、発表はするけれども、従来の発表に比べて今回の価の方が信頼性が高いという科学的根拠は定まっていないにも係わらず発表したことになる。上記の文に続いて関東大震災のような地震では首都圏に大きな影響があるので、新しい(でも科学的根拠が正しいか定まっていない)評価を公表するとしている。ただ、いわゆる直下型の地震確率には変更無く、相模トラフの地震の30年確率が0.8%から5%に上昇することによって、首都圏の震災対策が変更する必要が生じるかというと、現実問題として変更の必要はないと思う。確率が0.8%から80%に変わったなら大幅な施策変更が必要かも知れないが、5%に上がっても地震対策を進める強い駆動力とはならないだろう。つまり、報告書自体が不必要な物なのだけれど、それはおいといて科学的な内容を見る事にしよう。

 東日本大震災では、それまでは予測に使われていなかった津波痕跡が大きな意味を持つことが明らかになった。そのように今までの知見で無視されていたことから新たな知見が得られた場合には、長期評価の改訂に意味は存在するとは思う。では、どのような知見に基づき予想値が変わったのであろうか。
 相模トラフの地震については、これまで関東大震災タイプの震源域が神奈川あたりから房総沖までのものと、元禄タイプの震源域が房総沖を越えて太平洋まで拡がる2つのタイプがあるとされてきた。前者の繰り返し周期が400年程度、後者は2500年程度とされていた。関東大震災が大凡90年前なので、400年周期であることから、直近の30年の確率が0.8%とされていた。
 それに対して、報告書によは
1)必ずしも2つのタイプには分けられない可能性がある。
2)加茂川~茂原の海岸段丘の高さはこれまで知られている大正・元禄震災の周期だけでは説明出来ない
3)国府津断層はこの地震と同じタイミングで起きることがあるかも知れない。
の3点からM8クラスを大正型と元禄型に分けることは困難として予測を改めたとしている。
 1)と2)を併せると、これまでの400年、2500年周期ではない新たな地震がある可能性があるという主張に読み取れる。ただ、不思議なのは、ここ1000年の文書記録がある期間で、この第3の地震が生じてはいないので、生じるとしても周期は1000年以上になるので、それを周期予想に入れるのは非常に難しい印象がある。3)の国府津断層が入ってくるのは不思議なところで、この断層の活動周期は大正型関東地震の周期よりは遙かに長いもので、この手の長期予想に入れるのは上の第3のタイプと同じで、不確定要素が大きすぎる話である。
 さて、これらの新(?)情報と、歴史記録のある大正(1929)、元禄(1703)、永仁(1293)関東地震の間隔が、220、410年であること。地形データからは約3000年に9回のM8クラスの地震があるので平均間隔は約390年であるけれども、地質データなどから発生間隔のばらつきを調べると180~590年であるので、この値を使って計算すると、今回の値になるとしている。一方で、房総沖まで震源が延びる元禄タイプの発生確率はほぼ0%。ただし、房総沖のみ断層が滑る(神奈川側は起きない)は地質データとしては存在しないが、可能性は否定しないとしている。
 というのが報告書の概要である。不思議なのはこの考察に上に記した第3タイプや大正型と元禄型だけでは説明できない動きがあること、そして、国府津断層の影響が反映されていないことである。また、大正タイプと元禄タイプの2タイプ以外があることが想定されるから予測値を改めるというストーリーだった筈なのに、予測値を出したのは大正タイプと元禄タイプの2つでしかない。
 読んでいて頭に浮かんだのは羊頭狗肉という言葉で、こんな物を今になって(しかも途上のものを)出してくる意味合いは科学的にも、そして上に記したように防災上も全く存在しない。確率を高くして、役にも立たない地震研究に金を出させようという以外に目的が見当たらない報告書だ。地震学者は2011を想像すら出来なかったことを反省するどころか、反省するふりをして、それで焼け太りしか考えていない集団であることがこの報告書は示している。そして、こんな報告書を批判無く垂れ流すだけに新聞の科学部もほんとに役立たずだと思う。
 前にも書いたけれども大正関東地震の周期は元禄タイプの後は短く、その後はだんだんと長くなっていくと個人的には考えている。断層破断面終端の歪みを考えると、断層の動きにオーバーシュートがあるので、元禄タイプが起きた後は外側部分との境界の歪みが大きくなりやすく、早めに断層が動くことが想像できるからだ。それ故に、次の大正関東タイプは少なくとも200年以上の周期でしか発生しないと予想している。素人の戯言であるけれども、下駄を投げて天気予報をするような内容の調査委員会報告よりは信頼性は高いと思う。
 調査会報告ではM7の内陸地震の発生確率は30年以内に70%としているけれども阪神淡路大震災から分かるように内陸の直下型M7クラスは被害がかなり局所的なので、発生場所が特定されない限りは意味が無い。こんな無意味な予想値を発表するくらいなら、東京直下型の予想はまったく不可能と正直に言うべきだろうと思う。
 でも、最初に記したように、調査会が高い確率を付けたところは地震が起きなくなるので、実は調査会は首都圏の地震を防ぐために確率を上げた報告書を出したのかも知れない。そういう意味なら、調査会は無駄に税金を使っているのではなく立派な仕事をいていると言えるだろう。



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by ZAM20F2 | 2014-04-27 16:29 | 文系 | Comments(0)
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