ルーペの倍率を確かめる

 虚像の倍率の議論は分かりにくい。凸レンズの焦点距離をfmmとして、倍率は250/fで定義されるわけだけれども、これだと、レンズの焦点距離が250mm以上だと倍率は1倍以下になってしまう。通常は、250mmより焦点距離の長い凸レンズをつかっても、もとよりは大きく見えたりするので、その実感とは食い違いのある話になってしまう。
 ところで、目から250mmは明視の距離と呼ばれていけれども、これは一つのフィクションで、250mmは仮想的な人間がピントを合わせられる最短距離であり、250mmの場所に物を置いたからと言って、特別によく見えるわけではない。フィルム写真の時代には、フィルム上で許されるボケ量について、明視の距離である大きさの画像を見たときに分解出来ない程度の小ささで規定されていたけれども、普通の人はともかく、レンズの解像度を議論するような人は、ルーペを使って写真をチェックするわけで(今なら画面上で等ドット倍拡大するようなものだ)明視の距離なんて守っていなかったはずだ。
 閑話休題。250mmより長い焦点距離だと倍率が1以下になってしまうのは、目から物体までの距離が明視の距離より遠くなってしまうためで。そして、その前提として、レンズなしで見るときには目は頑張って250mm位置にピントを合わせているけれども、レンズ越しの場合は目のピント位置は無限遠方にあるとしている。ということは、物体はレンズの焦点位置にあるので、焦点距離が250mmより長ければ、物体位置も250mmより遠方になってしまう。これが、倍率が1倍以下になる理由だ。
  もし、目のピント調整機能を活用して、目としては明視の位置を見られる状態してもよいなら、いかなる凸レンズでも物体位置は明視の距離より手前になり、その結果として実効倍率は1倍以上になる。このため、実際にはどんな凸レンズを通して見ても、物がより大きく見えるようになる。

 さて、ここまでのことを踏まえて、倍率が不明のルーペの倍率を求める方法を考えて見ることにしよう。もちろん、焦点距離が測れれば、それで計算は出来るわけだけれども高倍率のルーペで焦点距離が短い場合には計測は楽ではない。そこで、カメラを使って倍率を測ることを考えたかったのだ。 カメラを用いての計測方法は、カメラを用いて比較対象とする物体を写せるかどうかで少しばかり異なる。ルーペが低倍率で(だったら焦点距離を測れという声がとんできそうだ)、対象が普通に撮影できる場合は、25cmの距離で撮影した画像と、レンズ側の焦点位置を無限遠方にしてルーペを通して撮影した画像を比較して、大きさが何倍になっているかを確認すればよいはずである。
 と云うわけで、カメラの距離目盛りを25cmに合わせて撮影し、それからルーペを入れて撮影したものを比較したのだけれど、公称3倍のルーペでも2倍も出ていない。この時点で気がついたことは、目から250mmは撮影距離250mmと等価ではなかったことだ。撮影距離の基準はフィルム面(撮像素子面)なので、0.25mではレンズ位置ははるかに物体に近くなっていて、目で250mmの物体を観察するよりも大きく見えているのだ。 そこで、もう少し薄べったいレンズを使って、レンズから25cmの距離に物を置いたのを基準として撮影してみると、確かに公称倍率程度の倍率が出ることが確認できる。
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この写真ではルーペ自体も写っているけれども、カメラレンズをルーペに近づけると
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と視野が広く取れるようになる。 ついでに、レンズの焦点調整を最短距離にして撮影すると、同じルーペを使っても倍率が少し上がることも確認出来る。
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※少しばかり謎なのは、公称3×のこのルーペは、カメラ側の焦点調整を無限遠方にすると結像せず、ある程度手前に焦点位置を持ってくると結像するようになる。と言うことは、フレーム下面が焦点位置より手前にあるということだ。このような設計になっている理由は、凸凹のあるものでも大丈夫なようにするためか、機械近視の効果を考えに入れたためなのかは不明。カメラレンズをルーペに近づけた時の写真は、少しピントを変えているため倍率が少し高くなっている。
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by ZAM20F2 | 2014-05-06 08:59 | 科学系 | Comments(0)
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