思いつきくふうと工作

図解模型工作文庫は20冊のシリーズで、紹介した物の他に、模型飛行機の作り方とか、工作品の塗装と仕上げといった、いかにもありそうなものから、社会科歴史模型の作り方という、言われて見れば有だし、文系の工作というのも面白いなと思わせるものもある。その中で、もう一冊取り寄せようと思ったのは「思いつき工夫と工作」という得体の知れない題名の本であった。中身が分からない以上は、現物を見るしかないと思ったわけである。
日本の古本屋をながめると「思いつきくふうと工作」というタイトルで著者名は同じで出ていたので、深く考えずに注文した。
やってきたのは
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裏表紙は
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な本。判型も、そしてデザインもどう見ても違っている。
この本、発行が1986年でISBN番号もついている。のだけれど、開けてみると、1975年に出版された子供の科学工作文庫の一冊を好評により新装版して工作ランドシリーズの一冊として発行した物とのことであった。

来てしまった物は仕方がないので、中を覗いてみると
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廃物から封筒を作るのは、エコですねぇなどと生暖かく見ていられるけれども、
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のインキ瓶を倒れにくくするでは、挿絵をみると烏口での製図の様子で、1986年は当然のこととして、1975年でも烏口で製図をする少年などいるはずもなく、いつの時代の本なんだと、目を疑る状況だ。
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さらにインキ瓶を倒れにくくする工夫が続いていくと、本当に1975年に出た時点で好評だったのかと不思議にさえ思えてしまう。

ところで、上の図から烏口を使っているか分かりにくいではないかと思う人もいるかも知れないけれど、少し頁をめくると
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とコンパスを烏口にする話もでてくるので、明らかに烏口を線引きに使う事が頭にある話なのである。それにしてもコンパスを烏口にする時の話、どこから突っ込むべきなのか。何しろ、このためには普通の鉛筆のコンパスではなく、烏口コンパスを持っていないといけないのだ。持っているものの順番からすると、烏口コンパスは烏口の後ろであって、烏口を鉛筆コンパスに付けて烏口コンパスとして使う工夫は成立しても逆はあり得ない状況であろうと思う。
まあ、それ以前に1975年に烏口コンパスと烏口を、この本の読者が使っているはずがないのであるけれども。
こうしてみると、恐らく、この本の内容は、図解模型工作文庫からほとんど変わっていないに違いない。昭和20年代後半から30年代だとすると、烏口を使うのも理解できるし、アルコールの家庭用見分け方
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なんていうのも少しは理解できる。

それにしても、ドライアイスと試験管を使ったモーターボートは駄目だろうと思う。

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ドライアイスを瓶に入れて爆発して怪我をするというのは、この時代に大人から注意されたことの一つで、ドライアイスモーターボートは一歩間違うと爆発する存在で、昭和30年頃でも紹介すべきではない。
ついでに記すと上にあるガラスコップを試験管台にというのも謎で、価格を考えると試験管を持っている子供は、試験管立ても持っていたと思う。思いつくのはいいのだけれども、状況にそぐわない工夫がこの本の中には多すぎる気がする。

ところで、この本の中には外から分からないようにバナナを輪切りにする芸というのが載っている。そしてご丁寧にも著者は「この作り方は、手品の本などによく書かれていますが、最初にこれを書いたのは私で、その本は下記のものでした。『化学実験と化学遊戯』p.117-119 誠文堂新光社 昭和13年刊」と記している。化学実験と化学遊戯にどうしてバナナを外から分からないように輪切りにする話が入るのか不思議でしょうが無い。というわけで、日本の古本屋サイトにアクセスすることになったのだけれども、模型作製ニューハンドブックという新しいシリーズが見つかってしまい、頭を抱えることになっている。あ、でも出版社は誠文堂新光社ではなく科学教材社となっている。まあ、似たようなものかもしれないけれど。
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by ZAM20F2 | 2014-06-26 22:45 | 科学系 | Comments(2)
Commented by 玉青 at 2014-06-28 10:27 x
こんにちは。毎回更新を楽しみにしています。
それにしても、何だか思いっきり思いつきな本ですねえ。
(誠文堂新光社の編集部も何を考えてるんでしょうか。)
思わず声を出して笑ってしまいました。
勢いで便乗記事を書かせていただきましたが、何か不都合な点がありましたらご一報ください。
Commented by ZAM20F2 at 2014-06-28 19:16
ご紹介いただき有難うございます。確かに著者より誠文堂新光社の編集部が何を考えて発行したのかが興味があります。と申しますが、誠文堂新光社は経営が傾きかけたことがあったはずですが、本屋は本を出していれば自転車操業になるので、とにかく出版したのではないかも考えています。で、誠文堂新光社のWebで歴史を調べたのですが、黒歴史は掲載されておらず、経営が苦しかったのがいつごろかは分かりませんでした。
Webに上げた以外にも、ずいぶんと脱力する内容が多く、そういう意味では、拾いものでした。
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