少年技師の電気学は、電気の正体に始まり、金属、半導体、不良導体の分類へと続いていく。半導体の中には木炭の他、不純の水やら人体なんかも入っているけれども、この本が書かれたのは1935年で、ブロッホのバンド理論が1928年頃のことらしいので、このあたりの(現代的意味での)正確さを求める必要はないと思う。
電流と電圧、さらには抵抗値の違いや、電圧と電流量、電力などを水の流れを使って説明している。
水の流れを引きおこすものはポンプを使っているけれども、発想としては水池(すいち)に近いものがある。そして、交流も扱えるという点で、水池よりも優れたモデルである。モデルでは、+極から流れが起こって-極に移動するとしている。これは混乱を避けるためだろうと思う。
このあたりは、電流計やスイッチと云った電機部品をそれぞれ対応する水系でしめしている。抵抗の大小は
と水流に対する抵抗の多少でしめしている。さらに
と電圧計を加えて、
その上で
電圧計と電流計のある回路を示している。このあたりのステップの切り方は、子供の科学で色々な質問に答えていた経験が生きている気がする。
さらに
と結線の抵抗を入れているあたりも、実際に模型をつくる子供が持つであろう疑問に対応している感じがある。そして
でたまった水の量として電力量の説明を行っている。
この本は、交流も扱っている。これは、最近の理科の授業ではほとんどふれられていないところな気がする(確かめたわけではない)。でも、モーターや変圧器や、そしてラジオ工作なんかをするなら、交流について触れないわけにはいかないわけで、本の趣旨からすれば当然の内容なのだろうと思う。
直流を
と普通のポンプで表現し、交流は
とピストン運動で示している。確かにこれだと行ったり来たりする水がそれなりの仕事をする説明が可能となる。ここまでは、それほど驚かなかったけれども続いて
が出てきたのには驚いた。
交流を扱うと、当然、コンデンサーやコイルの話も必要となる。それをどう扱っているかは次の機会に。