会津の鋸鍛冶による中屋八次郎さんの話

 少し前に中屋八次郎さんの手曲鋸と常世田さんの本をあげたのを切っ掛けにネットを探していたら、堤章さんの「会津の鋸鍛冶」という本があることが分かった。毎度おなじみの日本の古本屋で探したら、会津の古本屋さんにあった。シリーズまとめてのセットもあったのだけれど、流石に手がでる価格ではなく、幸いに、八次郎さんのことが載っているらしい「会津の鋸鍛冶 -近代の群像とその系譜-」がばら売りであったので取り寄せることにした。
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 常世田さんの本は1978年、昭和53年に出ていて取材はその少し前なので、昭和50年から数年の間と思われる。堤さんの本は平成元年なので、常世田さんの本からほぼ10年後に出たものだ。

 常世田さんの本に出てくる会津の鋸鍛冶は中屋中左衛門、中屋長五郎、中屋八次郎のお三方だけれども、中左衛門さんの話としてかつては35件あった鋸鍛冶が中左衛門、長五郎、伝左衛門、市右衛門、幸兵衛と合わせて5件と記されている(八次郎さんは個人なので5件には入っていないらしい)。さらに長五郎さんの話として会津で鍛造で鋸を打っているのは長五郎さんと八次郎さんだけとされている。また、八次郎さんの話として師匠だった秀右衛門さんの息子さんと八次郎さんだけは炭焼入れしていると記されている。ただ、秀右衛門さんは上の5件に出てこないのは少しばかり謎。また、八次郎さんは上野さんの所の作業場を借りて鋸を作っていることになっているけれども、上野さんの鍛冶名が分からなかった。

 堤さんの本には自ら調べた鋸鍛冶の系譜があり、その中には喜多方の鍛冶として八次郎さんも紹介されている。それによると八次郎さんの師匠は初代の秀右衛門さん。秀右衛門さんも喜多方の出で、秀右衛門さんは家の近所の友右衛門さんの仕事場を子供の頃から見ていた子供で、その後、秋田の猪右衛門の弟子になり、戻ってきてから若松の中屋長作の工房でしばらく働いてから独立した人だそうだ。昭和15年に亡くなられているとのこと。2代目の秀右衛門さんは、大正2年の生まれなので、八次郎さんよりは5歳年上になる。2代目は昭和32年に廃業とのことなので、常世田さんの本の時には既に廃業していたようだ。八次郎さんの話と合わせると昭和30年前後には、炭で焼き入れをする人はほぼいなくなっていたということだろうと思う。

 八次郎さんは昭和21年に復員されてから友右衛門の工場で働いていて昭和46年に独立されたと記されているけれども、友右衛門さんは昭和45年4月に脳溢血で倒れて同年の11月に工場をたたんだということなので、それにともない独立して鍛冶を始められたのだろうと思う。

 堤さんの本によると、上野さんは中屋正友さんのようだ。正友さんは友右衛門工場の工場長を務められていたそうだ。友右衛門工場が解散した後に中六日町に工場を持たれたけれど、昭和49年に廃業されたとのことなので、その後を八次郎さんが使っていたのだろうと思う。

 また、中屋長五郎が板を重ねて鋸の鍛造を行っている鍛冶で、長五郎工場の3人と八次郎さんで作業をしているとのことなので、八次郎さんは部分的には長五郎さんの工場も借りていたのかも知れない。八次郎さんは正友さんと長五郎さんと親交があったとも記してあるので話としては矛盾がない。

 堤さんの本の時代で、常世田さんの記述のあった5件の鍛冶は営業を続けており、そのほかに、吉右衛門、久右衛門 重作、真兵衛、宗兵衛、忠吉の方々が建築用なども含めて、鋸を作られていたと記述されている。

 現在では、会津の鋸鍛冶は伝左衛門さんだけが残っているらしい。平成17年に市右衛門さんが廃業したとのWeb情報はあるけれども、それ以外の方がいつ廃業されたかは、見つけ出せなかった。ただ、鋸鍛冶の中には善兵衛さんのようにチェーンソー等の販売に活路を見出した方もいらっしゃるようだ。

 鋸の本を書かれた堤章さんは、堤製作所の社長さんで、ステンレスで作った鍬を作られた方らしい。2008年のテレビ番組には出演されていて、そこでは、「「鍬は3里にして形を異にする」と言われるほど」全国で形の異なっていたため量産ができないので、全国共通で使えるハート型鍬を開発したとの内容が流れたらしい。それ以外にt's farm blogに「堤製作所(会津若松市) 「シャープル」」というエントリーがあり、そこで「あれから何年経ったか。シャープルは二代目になり、鍬はそろそろ先掛け(刃の付け替え)をしなくてはならない。残念なことに、堤さんとはたった一度の出会いで終わってしまった。」と記されているので、最近にお亡くなりになったようだ。八次郎さんは2000年版の電話帳ではお名前を確認できるのだけれども、2012年版では確認出来なかった。

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by ZAM20F2 | 2014-10-03 20:56 | 物系 | Comments(0)
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