宮本常一のカメラ

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本のタイトルは宮本常一と写真なのだけれど、本を見ながら、宮本常一が生きていたら、どんなデジカメを使っているだろうかと考えて見た。
宮本常一が当時使っていたのは、オリンパスペンだ。もちろん、現代のデジカメのではなく、ハーフサイズのフィルムカメラだ。本に載っている写真を見ると、シャープに写っているのもあるけれども、ピントを合わせそこねている写真なんかも存在する。
そもそも、ハーフサイズカメラは、画面面積がフルサイズより小さいから、画質はフルサイズにはかなわない。でも、宮本の写真を見て感じるのは、写真は多少のピンぼけがあっても、画質に問題があっても写されているのが重要だということ。どんなに描写性能のよいカメラとレンズをもっていても、その場でシャッターが押されなければ記録としての画像は残らない。大きくて振り回さなければならないカメラよりは、コンパクトで気軽に取り出せ、そしてぶら下げて持っていても負担にならないようなカメラの方が、より多くのシャッターチャンスに対応できる。
そうしてみると、宮本がフルサイズの一眼レフや距離計連動カメラではなく、オリンパスペンを愛用していたのは納得できることだ。ノートや筆記具と一緒に持ち歩くことができ、ゾーンフォーカスである程度のピント合わせをしておけば、ファインダーを覗いてからピント合わせをする手間もない。天候に合わせて、大体の絞りとシャッター速度を決めておけば、ほんとに考えることなくシャッターを押せる。そして、ハーフサイズだから、フルサイズの2倍のコマ数が撮影できる。経済的であるばかりでなく、出先でフィルムが切れて写真が撮影できなくなる危険性が減るのである。この利点を考えると、画質に問題があっても、フルサイズカメラよりハーフサイズカメラの方が宮本の用途には適合していると思う。

では、宮本が生きていたら、どんなデジタルカメラを選んだだろうか。フルサイズも含めた一眼レフタイプやレンズ交換式のデジタルカメラでなく、コンパクトなデジカメであることは確かである。撮像素子の大きなカメラの方が写りは良いが、はるかに小さくて、そして民俗学的な記録写真として使うのには充分なレベルの記録能力があるコンパクトデジカメが存在しているのだから、そちらを選ばない理由はない。それに、画素サイズの小さなデジカメの方が被写界深度が深いから、より幅広い領域がシャープに見える写真となる。宮本的な立場から言えば、ぼけ味なんかより手前も奥もシャープに写っている写真の方が価値が高い。

ところで、現在のデジカメには、ペンにはついていなかった様々な付加機能がある。それらの中で宮本の仕事に役立ちそうなものを少し眺めておこう。先ず一つ目はGPS。これは撮影場所の特定には有益だ。ただ、宮本の写真の撮り方を考えると、撮影時間が記録されているだけで、旅の経路と合わせて、撮影場所はほぼ定まるので、自動車での道路移動の途中などで無い限りは、GPSがついている御利益は大きくないかもしれない。一方で、GPSは電池食いなので、むしろない方がよいかもしれない。二つ目は、動画と音声録音。これは、民謡や踊りを見るときには非常に有益な機能になると思う。とりあえずのレベルで良いので、それなりの時間が記録できるとよいだろう。また、ボイスレコーダー機能があったら、それも使える気がする。ただ、インタビューなどで音声記録と写真撮影は同時に行われ、カメラは撮影時に動くので、カメラで音声記録をするより、専用のボイスレコーダーを持っていた方がよい気がする。ボイスレコーダーはコンパクトなものなので、カメラと一緒に持ち歩いていても大丈夫だと思う。三つ目は、防水機構。いわゆるタフカメラというやつだ。これは、あった方が扱いが楽だけれども、宮本がペンを使っていて特に問題がなかったことを考えると、防水が望ましいけれど必然ではないだろう。それ以外は、現在のデジカメについている付加機能で、特に役立つようなものはないように思う。

さて、上に記した付加機能も含めて、最も大事な条件は、撮影できない状況に陥らないということだ。撮影できない状況とは、メモリーフルやバッテリー切れ、それから暗所でぶれないでの撮影ができないといったことである。メモリーフルに関しては、32Gクラス以上のメモリーを入れておけば、1000枚以上の撮影は可能なので、1日のうちにメモリーフルに陥る可能性は低いと思う。また、メモリーカードはかさばらないから複数枚の所持も容易だ。暗所撮影性能に関しては、ISO1600程度が実用的でF値が2程度のレンズがあれば、カメラのぶれ止め機構も使って、かなりのところで撮影可能だと思う。バッテリー切れに関しては、現在のデジカメはほぼ充電式リチウムイオンバッテリーを使っているけれど、コンパクトデジカメの場合は、撮影可能枚数は500枚程度以下、200枚程度というものもある。また動画撮影を行うと数十分程度でバッテリー切れとなる。これは、数日はおろか、1日でもバッテリー切れとなる状況が出現する。3つの撮影できない状況を引きおこす要因の中でバッテリーが一番の問題だろうと思う。

バッテリーに関しては予備バッテリーを持つのが普通だけれども、バッテリーの残量管理は結構めんどくさいものだ。充電してあるつもりが、未充電だったりすると、バッテリーを交換して途方にくれることになる。できれば、専用のバッテリーだけでなく、汎用バッテリーも使える機種であることが望ましい。残念ながら、汎用の単3や単4電池がつかえるデジカメは現時点では、妙に大きい高倍率ズームタイプか、おもちゃ的なものしかない。カメラにとって一番重要な「撮影できない状況に陥らない」という点に関して、現在のコンデジの大半は欠陥商品なのである。

というわけで、宮本は相変わらず、ハーフサイズのオリンパスペンを持ち歩くか、それとも数世代前の乾電池も使えるデジカメを愛用しているのかなぁなどと少し前まで考えていた。で、ふとホームセンターの投げ売りコーナーで見かけたのが
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単三電池4本を使うUSB給電器。附属のニッケル水素充電池を使う仕様だけれど、いざとなれば普通の単三も使えるという。ということは、USB経由で充電するデジカメなら、これを使えば単三電池のデジカメと同じようにつかるということになる。いくつかのメーカーからは、USB経由の充電のカメラがあり、ユーザーの中には、別売でも良いから充電器が欲しいなんて口コミもあるのだけれど、むしろ、USB充電であることが、現在では非常に重要な選択要素になる気がしている。
とここまで書いて気がついたのだけれどUSB給電可能で、静止画と動画の撮影機能があって、なおかつGPSも対応して、そして……となると、実はカメラより、スマートフォンやタブレットという選択肢も出てくることになる。宮本常一が今、生きていたら古典的に手帳やメモを使い続けているのか、それとも希代のタブレット使いになっているのか、どちらなのだろう。







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by ZAM20F2 | 2014-11-16 19:16 | 文系 | Comments(1)
Commented by のり at 2014-11-17 00:12 x
すごくためになりました。私の旅のお供は,NIKONの単3電池2個を使用するデジカメです。とても便利です。画像はブログで使用するだけなので満足しています。でも,おっしゃる通り,スマホのカメラが便利でつい使ってしまいます。ブログよりFBでアップすることが多くなったので。
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