無色じゃない

カラーフィルターには光の吸収によって色がついているものと、光の波長と同じ程度の積層膜構造で色を付けているもの(誘電体多層フィルター)がある。
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この写真の真ん中は顕微鏡用の単色フィルターで両側はカメラ用の緑色フィルターだ。透過光で見ると、真ん中の緑が鮮やかだけれど、まあ、いずれも緑色フィルターである。ところが、これらを反射光で見ると
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と、真ん中のものと両側のもので色味が全然違ってしまう。
誘電体多層フィルターでは、透過で見えている色の補色は反射光となるために、色味がまったく違ってしまうのである。ただ、このフィルターは誘電体多層としてはおかしなところがある。緑色の補色はマゼンタで黄色ではない。これがシアンのフィルターだったら、この補色でありなのだけれど、何かがおかしいのである。
何が起こっているのかを考えるべく、透過と反射のスペクトルを調べてみた。
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きちんと規格化した測定ではないので、測定された透過率と反射率に適当な係数をかけたものを足し合わせて100%になるように調整している。完璧な誘電体多層フィルターなら、フィルター自体の吸収はないので反射と透過の和は波長によらず100%になるはずなのである。見てみると、長波長側はほぼ100%でフラットになっている。しかし、短波長側の合計値が100%より遙かに小さな値となっている。
ということは……短波長側の透過光が低いのは誘電体多層による効果ではなく、光吸収により生じているらしい。確かに改めてフィルターを見ると、側面が黄色っぽい。基板が無色な物質なら、そんな風に見えないはずだ。
何故黄色の基板を使っているかというと、おそらく、このフィルターに用いている誘電体多層フィルターが単体では短波長側の透過光領域が広すぎて緑色にならない(それこそ、シアンのフィルターになってしまう)ためであるような気がする。そして、緑の部分のみを透過する誘電体多層構造を作るより、黄色フィルターと組みあわせて短波長側を透過しないようにした方がコストが低くてすむので、このような構造にしているのではないかと思う。
フィルターの基板が黄色である可能性に気がついた結果として、ここしばらくの謎が解明された。誘電体多層フィルターではフィルターを光軸に対して傾けていくと色味が短波長側にずれている。元が緑なら、傾けると青緑、青と変化していくはずなのである。それにも係わらず、このフィルターを傾けていくと
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垂直入射の緑から、傾けていった
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へんな色を経て、さらに傾けると
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橙色になってしまい、青緑や青は出てこないのである。
この結果は基板が黄色であるとすると、なんとか理解できる。傾けることにより色味が青色側にシフトしても黄色で吸収されるので、強くならない。一方で、このフィルターは近赤外領域にも透過窓があるのだけれど、それが短波長化して赤も通るようになるため、なんとなく妙な色味になり、そして、さらに傾けると長波長側の窓の効果でオレンジに見えるようになる。
というわけで、結果として、顕微鏡用の緑色フィルターは、誘電体多層フィルターのデモに使うのは妥当ではないということが分かってしまった。

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by ZAM20F2 | 2014-11-30 13:57 | 科学系 | Comments(0)
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