音とは何か 少国民のために

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本の著者の小幡重一は戦前の音響学の大家。色々な本を書いている。その著者が少年向けに書いた本だけれども、目に見えない存在を伝える話だけに、それが容易な作業でないのは、きっちりと認識していたようだ。前書きにも

「しかし、音の世界がさまざまなものに満ちて広々としているように、今まで沢山の人々が音を研究して得た知識の山も大変な高い山になっています。諸君はこれからこの高い山へ登るのです。この本は諸君がそういう登山をするために作られた案内書なのです。案内書というものはただすらすら読んだだけではなんの役にもたちません。実際に登る人は諸君です。この案内書を読みながらほうぼうを眺めたり道がまちがっていないかを調べたりして、実際に一歩一歩高いところへ上がって行くのは諸君自身の足であることを忘れてはいけません。ゆっくりと読み、実際の観察実験を充分にやってゆっくりと考え、よく納得の出来た時にはじめて次の道をたどるようにして行きましょう。

と読者の努力を要求している。
本の最初には音の波形がある。今ならデジタルオシロで簡単に取れるようなものだけれども、この時代には光学ガルバを使っているように思う。
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さて本文は音が身の回りに満ちあふれた存在であることから始まり、その先に音速測定の話などが続いている。
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この流れはシリーズに共通のものである。大砲を使った音速測定の後に、花火や雷の光と音の差から距離がわかる話がある。
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ここは、雷の話にもつながるところだ。
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山彦をつかった距離測定の話もあるけれども、へえと思ったのは、比較的距離が近い場合には、声と山彦が交互になるようなタイミングで発声を続けて、複数回の声の時間から距離をだすなんて知恵も書いてある。
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それらに続いて、音の正体に進んでいく。
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でも、著者は空気の粗密波というものが分かりにくいことを、はっきりと認識しているので、非常に丁寧に例を挙げて話を進めていく。

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小田原提灯を使った例は可視化として中々良さそうだし、その上で、粗密波を横波で表現する書き方を示して、音の大小と高低の違いを説明し、伝わる様子を出した図へとつながっていく。
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この後、話は音楽の事、人の発声の仕方、耳の構造とつながっていく。音楽の話では、オクターブが倍音になっているという話から、和音が3倍波のオクターブ違いであるとか、平均律とそれ以前の音階の違いなどが科学的な視点から語られている。昔にこんな説明を聞いていたら、もっと音楽に親しめたかも知れないなぁと本を読みながら感じていた。


この本、結びの言葉もかっこいい。

むすび
これで、この案内書の目次は大体話し終わりました。
諸君がもっと高いところへ登っていきたいというのでしたら、一そう程度の高い案内書を求めてお読みなさい。そういう本はいくらでもあります。どういう本がいいか、ということは、学校の先生におたづねなさい。お父さんでも、兄さんでも喜んで相談に載ってくれるでしょう。
しかしこの案内書にあるだけの道を十分に登ったのでしたら、それだけでも、もう相当な高さに登ることが出来て、その高さから下を眺めた時の、音の世界の広々としたすばらしい景色を楽しむことが出来ると思います。
どうですか、諸君のいるところから見た眺めは。

このむすびは、「にじ」創刊の辞の科学のルールを学ぶことによって、世界が拡がるという主張につながるものがある。そして、さらなる高みがあることも示している。その場でわかった気にさせる科学教室の先に高みに登る道はつながっているのだろうか。


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by ZAM20F2 | 2015-03-01 17:55 | 科学系 | Comments(2)
Commented by Akiko at 2015-03-09 13:45 x
こんにちは。いつも記事を楽しみにしています。
小学校4年生の息子がいます。
「音とは何か」面白そうだなあ、と思い、アマゾンで注文しま
した。一つ、一つ丁寧に説明してあり、わくわくしながら
三分の一ほど読み進めたところです。私がきちんと理解できた
ら、息子に読みきかせしようと思っています。
いつも魅力的な本の紹介ありがとうございます。以前、紹介し
てくださった天文の図鑑も、古本屋で見つけて購入しました。
落雷で死ぬパーセントの部分が、面白いです。

定期的な子供向けの科学の雑誌がなかなか見つかりません。
「子供の科学」は情報がありすぎて、内容は良いはずなのに、
どうしても好きになれません。
科学と学習、という雑誌は廃刊になってしまうし、
子供が、毎月わくわくしながら待つ雑誌が(できれば付録付きで)あればいいなあ、と思っています。

このブログでいつも紹介していただける本や雑誌を毎回楽しみ
にしています。

これからもどうかよろしくお願いいたします。
Commented by ZAM20F2 at 2015-03-13 07:24
コメントを頂き有難うございます。少国民のためにのシリーズは「音とは何か」以外も、面白い本が揃っているように思います。日本の古本屋もあたると、amazonより安価で入手できることもあるかと思います。ただ、さすがに内容が古くなっているものもあり、岩波ではその後に「科学の本」(中・高むけ)を出しています。いずれ紹介する予定でいます。
ところで、「以前の天文の図鑑」ってどんな本でしたっけ?記憶になくうろたえています。
子ども向けの本は、リンクにある「天文古玩」さんや「ミクロワールドサービス」さんでも紹介されているので、そちらも是非ご覧下さい。
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