山はどうして出来たか 少国民のために

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地球の生いたちという副題のついたこの本は、戦前に発行されたものの一冊で、著者の大塚彌之助は、シリーズの通例に漏れず、その分野の大家。結核のため50にならぬうちに亡くなってしまったが、日本の地質学に大きな足跡を残した人である。大塚は1903年生まれ。この本の序文の昭和17年にはまだ40にもならぬ若さであるけれども、それ以前に既に、岩波講座地質学古生物学の中の第四紀学と地形発達史(望月との共著)を出している気鋭の学者であった。

戦後版の本では章立ての構成が変わっているらしい(そして表紙も赤系から青系になっている)のだけれど、ここでは手元にある戦中版をもとに内容を紹介していく。
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本は「山とは何か」と少し人を食ったような頁から始まる。
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大塚は「山とは何か」という分かりきったことのような問が本当に分かりきったことなのかから本を始めている。この節には「ところが学校に行き始め、いろいろなことを教わるようになると「知りたい」という気持ちがだんだん薄らぎ、せっかく先生が教えて下さることをうわのそらできいたり、わからぬことがあっても平気でいるようになるものが多い。知りたいという気持ちがなければ知識は得られないし、疑いをおこさなければ知識は進歩しない」という、なかなかに考えさせられる言葉も混ぜ込んである。その上で、「山はどうして出来たのか」というタイトルを見て、山は大昔からあったのではないかという疑問を持つ読者もいるだろうと継ぎ、その上で、「百万年前には、たとえば富士山などはなかったのかもしれない」と述べて、それをこの本で説明していくことを伝えている。

大塚が最初に題材として取り上げるのは富士山である。これは、知名度を考えれば当然のことであろう。大塚は富士山について歴史的な噴火の記録を示した上で、砂遊びで出来る円錐形の砂山を色の異なる砂で作った積層構造と富士山に類似点が無いかと話を進めていく。富士山については、単なる推測ではなく谷や宝永噴火のくぼみなどで断面の一部が観測できることを伝えて単なる空想ではないことを示している。

このあと、単純に噴火の話になるのかと思うと、物質の三態や、相変化には圧力も要因として含まれること、さらに結晶の話を挟み込んでいる。
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大塚は後書きで、本に書いた学問は色々な学問領域の知識を合わせた上で成立することを述べている。この部分もそれを意識した構成になっているようである。

富士山に引き続き、色々なタイプの火山の紹介し、
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いずれにせよ、地球の深部に液状の岩である岩漿があり、それが地表に流れ出すのが火山であることを説明し、そして、岩漿のあることも含めて、そもそも地球とはどの様な物かへと話が移っていく。もっとも話は地球にとどまらず、地球が丸いことや天動説と合わせて、太陽系の惑星や銀河系まで話は拡がっていく。

そして一旦拡がった銀河系から、太陽系の成因についてカントとラプラスの星雲説とジーンズの潮汐節を紹介している。ただし、太陽系の出来方については定説がないことは示してある。

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続いて地球の構造についての話がなされている。地震波をつかって地殻の厚さが測られていることや、それより深い所にも構造があることが示されている。ただし、このあたりの話はプレートテクトニクスよりはるかに前の話の訳で、当時の理解を固定化したものとして読むのが良いだろう。
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続いての地層の話は太陽系や地球の構造に比べてはるかに具体的になっていく。水成岩についてそこに含まれる生物化石から、どのような環境で堆積した地層であるかを判断出来るという話が続いている。太平洋の深海の底には放散中軟泥が分布しているなんてことがすでに分かっていたのかと驚かされる。
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地層に含まれている化石から地層の出来た条件や古さが分かることから話は化石へと転換していく。
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馬の脚の変化などと言う見慣れた図も(最近ではそんな単純でないという話もあるらしいけど)掲載されている。そして化石による地質時代の分類と、その年齢へと話が続いている。
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地質時代として古い方から始生界、原生界、古生界、中生界、新生界との区別がなされ、富士山を初めとする火山は新生界の第四紀のものであることが書かれている。

戦前のこの時期に、すでに放射性物質の崩壊を使った年代測定が行われていて,カンブリア紀に2.2億年という結果が出ているという記述がある。その一方で、米国の国立学術研究会議による図ではカンブリア紀は約5.5億年前から4.5億年前と現在の知識により近い数字となっている。地層の堆積速度などのデータを元に作られた値であるようだけれども、その推定の正しさを見ると、直接的手法ではなく、よく考えられた間接的手法でも、随分と正しいところに到達できるものだと改めて思わせてくれる。もっとも、それ以前の原生代はせいぜい20億年程度と想定されており、地球の年齢は現在より随分と若く考えられていたようだ。
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<続く>

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by ZAM20F2 | 2015-03-05 22:11 | 科学系 | Comments(0)
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