山はどうして出来たか(2) 少国民のために

承前



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山を壊す力としてスフィンクスの風化から風蝕をとりあげ、続いて、それより強い水による破壊を取り上げ石灰洞の紹介を行っている。石割り桜を例に出しながら、動植物の影響などという普通は思いつかないようなものもとりあげている。

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これらの作用を土地の表面や岩石に対して生じる風化作用と、地形を変化させる浸食作用に分けて、浸食によって生じる地形の説明を行っている。



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続いて山を作る力として、東京近辺の地層と、そして関東大地震や濃尾地震時の土地の動きから地面には隆起や沈降などの現象があることを示している。


地震では急激に動くが、それ以外にもスカンジナビア半島では隆起が続いており、それは氷河の重みによる沈降からの回復であると語られている。桜島での観測結果から噴火前には隆起が、噴火後には沈降が生じていることが紹介されている一方で、噴出物量から想定されるより沈降量の方が大きく、その原因は解明されていないことも書かれている。これらの測定は陸地測量部により行われていることが紹介されており、このあたりでは地図の話への橋渡しがなされている。



日本の山はどうして出来たかという節では、日本の山岳部分は隆起傾向にあることが(理由は述べずに)紹介され、その隆起部分が浸食されると日本の山岳地帯と類似の地形ができることが示唆され、その上で、断層や褶曲などの地形の変形現象の説明が続いている。

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とはいえ、これらの変形を引きおこす原動力については、この本の時点では明らかにされておらず、地球収縮説、アイソスタシーによる上下運動説、
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大陸移動説、
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ブーカーによる相変化による体積変化が引きおこす罅の話などが紹介されている。これらの中、ラジウムなどの発熱により、罅を引きおこす程の収縮には疑いがもたれていることや、大陸移動説に説明困難な点が多いことが記されている。(その一方で、天体観察により、大陸が相互に動いていることが実証されていることも記載されている。)



原因は分からないにしても地球表面には山を作る作用と壊す作用が並行して働いており、破壊と創造の繰り返しが起こっており、すべてのものが変化していることを強調している。



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むすびの中で、大塚は人類の進歩は驚くべきものだが、それでも、未だに大多数の人間はウイルスや微生物感染、そして天災により寿命を全うできていないし、また生きている間も不幸な気持ちで暮らす人間が多いことを嘆いている。そして、それを改めるためにはより正しい知識を得て、正しい手段を見いだす必要があると述べている。




この本に関の序文には、本の制作プロセスに関する記述がない。このため、他の本のように子供に向けた講義から書き起こされた物かは本を眺めただけではわからない。とはいえ、大塚はあるときお弟子さんの一人に「君、やさしく説明するというのは、難しいことだね」と話した。この話は戦後で、中等教育の教科書の執筆時のことなのだが、この発言に対して、お弟子さんは「山はどうして出来たか」を上げて、あの本の著者の言葉とは思えないと言ったところ、大塚は声を低めて「ここだけの話だがね、あれはぼくの書いたものを小堀杏奴さん(森鴎外の次女)が全部書きなおしたものなんだよ」と話したという。どうやら、原稿は大塚が書いたようだけれども、けっして簡単な制作プロセスで出来上がったものではないようだ。
ところで、そのお弟子さんは杉村新、少国民のためにに換わって岩波から出された科学の本の中の一冊、大地の動きをさぐるの著者である。


杉村新、私と2人の先生:望月勝海と大塚弥之助、地質ニュース, Vol.45(1992)4.
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by ZAM20F2 | 2015-03-08 09:04 | 科学系 | Comments(0)
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