伝えようとする言葉について

お茶の水からふらふらと歩いていたら、九段下に出てしまい、そのままお堀の傍に経っている建物に吸い込まれてしまった。エレベータで上まで上がって降りてくる作りになっているのだけれど、中に入るのははじめて。いくつかの時代毎の暮らしぶりなどの展示があるのだけれど、
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という70年以上前のポスターを眺めて、暗い気持ちになる。こんな時代には
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という感じのたすきを掛けた小母さん達が、憲兵以上に近所に目を光らせて、今で言うところのパワハラをかけまくっていたのだろうと思う。

問題は、どうしてそうなっていくのを止められなかったかだ。それをきちんと理解した上で対処方法を考えない限りは、同じような流れが起こったとしても食い止めることは困難だろうと思う。今の世の流れに対して、懸念の声は随分と上がるようになっているのだけれど、ストレートな懸念表明が多く、ここ2,30年間の所謂革新政党のスローガンと同じように、人々の頭の上を通り過ぎていくような感じがする。そんなことを考えている時に、「図書」8月号の高橋源一郎さんの「見える戦争と見えない戦争(下)」の中の一節が目に入ってきた。

「でも、『風立ちぬ』を曇りのない目で見ると、ピュアで、与えられた仕事を淡々とこなす日本のサラリーマンのように、あるいはいまの若者のようにも見えます。その結果起こることはわかっているのだけれど、主人公の行ったことや考え自体は決して異常ではない。誰にでもあったかもしれないこととして『風立ちぬ』は描かれています。そのことにより、罪深いものとしてだけの戦中の出来事ではなく、良いことも悪いことも含めたすべての時間が七十年後の世代にも伝わるように作られていると思いました。ぼくが十代だったとしても、ああ、こんあ時代があったんだな、こうやって人々は戦争の中に入っていったんだな、他人ごとじゃないね、と思うでしょう。しかし罪を問われる画面を見せられたら、むかつくかもしれない。

中略

厳しい言い方をして攻撃的になればなるほど、多くの人が背を向ける。できるだけ多くの人たちにこちらを向いてもらうことしか、この社会が悪い方向へ傾斜していくのを防ぐ道はないのではないでしょうか。」

話は変わるが、自衛隊を海外派遣するというやりとりの中で、海峡封鎖により石油が日本に入らなくなるのが国家の危機的状況という話が出た気がする。70年以上前に、極東の島国が南方に進出したのも、西の方の国の経済封鎖で入らなくなった石油を求めてという要素がある。

考えて見れば、今の政権が議会で多数を占めるようになったのも、経済政策を旗印にしたことが大きな要因だ。経済政策といっても、カジノによる経済効果などという、簡単にいうとばくちの寺銭というヤクザの親分の領域の話も混ざっていて、とても一国の宰相の台詞とは思えないものまで入っていたわけだけれども、人々はそれでも金銭的な豊かさを要望しているわけだ。

事情は原子力発電所でも似たようなものだ。事故の事を考えなくても、廃棄物処理のコストを考えると、原子力は非常に高い電力になるはずなのだけれど、処理のことは将来に先送りして、今現在は費用を計上しないので、安価にみえる料金設定が可能になっているに過ぎない。その電力が欲しいという経済団体の後押しにより再稼働を進めているわけだから、この国の未来をつぶすことにより現在の豊かさを確保しようとしているわけだ。戦争の可能性があるにもかかわらず南方に石油を求めて進出したのと同様の発想形態だ。

物質や金銭的な豊かさや安定ではない価値を作り出すのは困難なことだ。既に、豊かな暮らしをしている人々に対しては、オークヴィレッジのような価値観を示すことも可能かもしれない。でも、空中窒素を技術の力で固定化して得られた肥料を使わなければ、全世界の人口をまかなえない現状において、非技術的な方向性を目指すのは、非常に贅沢な行為でしかない可能性がある。

と云うわけで、使えそうな代替案が見つかる気がしないので、自分で考えなければならないわけなのだけれど、どうも、私自身の発想形態が世間様からはずれているようで、考えた結果が多数の人の共感を得そうにないのが困ったところだ……


※余談になるが、九段下の脇にある建物の5F(無料で入れる)には昔の映像や大学校歌や会社社歌を聴けるところがある。そして、会社社歌の中には「カメラあるところ観音あり」などという有り難い歌が聴けるものもある。カメラやらレンズを買い込んでいると、菩薩様がやってきて救われることになるらしい。沼の住人は来世が約束されていると喜んでよさそうだ。


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by ZAM20F2 | 2015-08-16 08:36 | 文系 | Comments(0)
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