分光光度計の光源は一つ前のエントリーに印したように可視領域はハロゲンランプが普通だ。普通の電球は使っているとフィラメントから蒸発した金属が電球の内壁に付着して暗くなったりする。その点ハロゲンランプは光量やスペクトルの経時変化が少なく、分光光度計の光源として安心して使用できる。ハロゲンランプには100V点灯のものと、低電圧のものがあり、低電圧のものの方がフィラメントがコンパクトに巻いてあり、こちらが分光光度計の光源に使われている。ハロゲンの光は短波長側で急激に弱くなり、がんばっても350nm程度までが限界で、市販の分光光度計で紫外まで測定できるものは、そのあたりより短波長側の光源として重水素ランプを用いている。
ハロゲンランプは効率が高くはないので、一般照明用にはハロゲンではなくLEDが使われるようになったけれども、普通の白色LEDは青と黄色の光しか出ていないため、測定可能な波長範囲は広くない。紫励起で高演色のLEDを使えば、400~700nm程度まで対応できそうなものもありそうだけれど、今回は、昔ながらのタングステンフィラメントの電球を用いることにした。 当然のように、ハロゲンランプを用いることを考えて、懐中電灯用のハロゲンランプは入手したのだけれど、ソケットが入手できず、結果的に普通の懐中電灯の豆球で試してみることにした。 使ったのは2.5V0.3Aの探見球(タンケンキュウ)。ソケットの固定には、ナイロンクランプを使っている。これは、ホームセンターでソケットを物色している時に目についたもの。サイズ的にソケットを固定できそうだと買い込んだ。本来の用途はコードの結束固定。手で押さえてezSpectra 815Vの入射口と高さを合わせてみたら、2cmの台で良さそうだったので、1cmの板を2枚重ねている。固定のためにねじ込んだら、上の板が割れたのだけれど、止まっているので、そのまま使っている。作ってみたら、ナイロンクランプを回すと、フィラメントの位置が左右に移動するので、左右微調整に使えてなかなか良い感じだ。 ハロゲンランプでなくてもよいなら、100V点灯の小さめの電球も頭には浮かんだのだけれど、交流点灯だと光強度の揺れがあって、測定時間によっては、スペクトルが狂うので、直流点灯の方が都合がよい。それに、乾電池で動くようにしておけば、屋外でも使用可能になるので、より使える範囲が広くなる。 探見球単体では光量が足りないので、集光の必要がある。分光器ではレンズ系による色収差を嫌い、反射光学系を使うのが基本だ。キュベットのサイズが1cm程度なので、小ぶりの集光系が必要になる。ミニマグライトの単4電池1本で点灯するタイプは、小ぶりの反射鏡があり魅力的なのだけれど、ちょっと特殊過ぎる印象がある。というか、光源として豆電球を使う小ぶりな懐中電灯を使うことを考えたのだけれど、その辺のホームセンターを探しても、そんなものは売っていない。もはや豆球ではなくLEDを使った品ばかりだった。その結果、懐中電灯の構造も光を反射鏡で整えるのではなく、LEDから前方にのみ出てきた光をレンズで整える形のものが多くなっている。また、反射鏡タイプでも、光源の位置が豆球のものとは異なってしまっている。 あきらめて、懐中電灯から取り出したレンズを使うことにした。使ったレンズは、ミクロワールドサービスさんの2015年11月23日の記事で紹介されているLED懐中電灯から抜き出したもの。 溝のある15mm角の材を向かい合わせに固定して、その溝でレンズを固定している。こちらは、上下の光路調整が可能で、ナイロンクランプの動きとあわせて、上下左右の調整ができるようになった。 豆電球とレンズの組み合わせで光量は十二分。色収差は……評価していないけれども、それなりに広い面積(といっても数ミリ角程度だが)の測定では、大きな影響はでないような印象だ。
by ZAM20F2
| 2017-08-19 18:42
| 科学系
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