軸外し放物面鏡

回折格子と一緒にやってきた凹面鏡。アルミニウムが部分的に腐食してしまっている。
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状態が悪かったので、来たときに少し眺めたきりで、一応は防湿箱に入れていたのだけれど、久しぶりに回折格子を眺めようと取り出したついでに、これも出してみて、目を見張った。

急に目を見張る羽目になったのは、少し前に、ニコンの古いカタログを眺めていたからだ。
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ニコンは25cmと50cmの分光器を売っていたのだけれど、25cmの方は、G-250とP-250という二つの機種があった。カタログの頁をめくると、光路図もついて、それぞれの説明がある。
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二つで何が違うのかというとG-250の方はスリットから出てきた光を回折格子に入れる平行光線にするのに球面の凹面鏡を使っているのに対して、P-250の方は放物面鏡を使っている。

球面は、その曲率半径の点から出てきた光を、元の点に集光して集める能力はあっても、一点から出てきた光を平行光線にする力はない。それに、一点から出た光を異なる方向に送ろうとすると、非点収差が生じてしまう。

一方、放物面鏡なら、一点から出た光を平行光線にできる。そして、放物面鏡の片側、放物面鏡の光軸を外れた部分だけを使えば、焦点位置からの光を、焦点位置を通らない平行光線として送り出すことができる。これが、軸外し放物面鏡である。

最近ではカメラレンズにも随分と非球面が使われているけれども、それは、鋳型での鋳造みたいな方法で非球面が製造できるようになったから可能になったことで、非球面をいちいち切削で作り出さなければならなかった昔は、非球面レンズは非常に高価なものであった。もちろん、非球面のミラーも普通のミラーに比べれば遙かに高価な品で、そこら辺には絶対に転がっていない品だった。

ニコンの分光器は、回折格子は自社製造ではないのではないかと思うけれども、放物面鏡は自分のところで作っていたのではないかと思う。

さて、光路図を拡大してみると、球面鏡は左右対称に描かれているのに、放物面鏡の方は、軸外しだけあって、左右非対称。
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そして、回折格子と一緒にやってきた凹面鏡を上から見ると、見事に非球面なのだ。
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これは、P-250に付いていたミラーに間違いない。それにしても、この品の出所がどんなところだったのか、気になってしまう。何しろ当時としては、かなり高価な品だったはず。そして、本体廃棄時に分光器から取り外されているので、この手の光学部品の価値を知っている人がいたはず。でも、ミラーの腐食の様子を見ると、分光器の上の蓋を開けた状態で会話がなされて、唾が飛んでミラーに付いたなんて可能性が疑われるのだ。ちなみに、グレーティングは600本の方なのも不思議なところで、P-250だったら、やっぱり1200本がついていて欲しかったところ。

平行光線の光源はなかったので、懐中電灯を狭い部屋でできるだけ離して、軸外しの結像を撮影してみた。


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軸外し放物面鏡と分かると、ミラーをきれいに修復したいのだけれど、アルミをはがすのから一仕事で、すぐには手をつけられそうにはない。




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by ZAM20F2 | 2017-11-22 07:21 | Comments(0)
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