地上での色つきシャボン玉のアクセス数が増えてきた。夏休みも後半に入って、自由研究が気になる人が増えてきたようだ。
それにしても、自由研究というのは「サービス残業」につながる臭いのする名称だ。本当に自由なら、やらない自由もあって良いはずで、研究課題の選択権があるにしても、自由研究と呼ぶよりは強制研究とか不自由研究と呼んだ方がよいように思う。そういえば、知り合いの企業勤めの人は、「自主研究」と称して業務に関連する研究を行って、上司の前で発表する義務があると云っていた。で、自主研究なので就業時間中にはできず、もちろん、自主研究だからやっていても残業は付かないそうだ。これ、明らかに組織として駄目なことをやっているわけだ。夏休みの強制を自由、会社で強制を自主と言い換える背景には共通の思考形式があるような気がする。 だいぶ昔に箱根の麓にある博物館で見た子供の自由研究の発表展で、黄色や赤のピーマンが光合成をするかという研究の出来が良く感動に近い感心をしたことがある。Web上にあるSSHの課題研究なんかより、研究としてのセンスが上なのだ。ところが、だいぶ立ってから、ふとした切っ掛けでネット検索したら、自由研究の課題サイトにほぼ同じものが掲載されているのを見つけてしまった。サイトの日付と博物館で見た時を考えると、発表者のオリジナルではなく、アイデア拝借の可能性が高い。ただし、発表には参考情報は記されていなかったように思う。 考えて見れば、普通の子供にとって、夏休みの限られた期間で、興味を持って、なおかつ実現可能な課題を見いだして、それを調べて、まとめるなんて芸当を行うのは非常に困難なことだ。Web上に見かけるSSHの課題研究なんかでも、高校生が1年かけて先生の指導の下に行っているにも係わらず、首をかしげざるをえないのがごろごろしていることを考えても、きちんと筋の通った研究を行うことの困難さが良く分かる。それより年少で期間も短く理科の専任教師の指導もない自由研究がどの程度になるかは想像が付こうというものだ。 ところが、自由研究では、研究の動機やら手法などをきちんとまとめることが要求されるらしい。もちろん、正直に「自由研究をやらなければならなかったので簡単そうなのを選ぶことにした」なんて動機を書いてはいけない。そこで、Web上の情報や、自由研究の課題を集めた本を参考にすることや、近年では色々な団体が行う自由研究に関する催しに出かけることになるようだ。 その手の情報を使った自由研究は、箱根の麓にある博物館で見たもののように子供が自力で行った研究よりは、遙かに優れた物になる。しかし、アイデアの出所が本人のものではないという点で、物事に興味をもって自らの興味で考えるという指向を育てるのには問題がある可能性がある。もちろん、外からの情報を使っていても、それらのアイデアの出所をきちんと記した上で、自分のオリジナリティを示せればよい。しかし、そんな教育はなされていないだろうから、結果的に、アイデアを拾ってきた自由研究が見栄えがよく、高く評価されるという傾向が進んでいくことになる。 そして、「三つ児の魂百までも」ということわざもあるわけで、参考情報の表示なしに、拾ってきたテーマを自分で考えたかのようにまとめることの先には、コピーペーストの博士論文や英国自然誌の投稿論文が出来上がってくるだろうという気さえする。 勝手に物事に興味をもってしまう子供が行う自由研究は足を引っ張ることなく先に延ばしてあげるべきだとは思う。しかし、その一方で、ほとんど興味を持たない(多くの)子供に強制的に研究を強いるのは、むしろ理科的な事柄にめんどくささを感じさせ、理科嫌いを増やす原因の一つになっている可能性すらある。さらに言えば、次ぎあたりに出てくる自由研究指南書の「仮説」の扱いなんかを見ると、自由研究を強制するのは止めちまった方が理科教育にはプラスになるだろう。
by ZAM20F2
| 2014-08-15 19:18
| 文系
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Comments(2)
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Ataron at 2014-08-15 21:48
もう過去のコトになりますが、職場で毎期ごとに「新しい」プランを強制されていた時の憤懣を思い出します。 私はそういうの調子良く誤魔化したりデッチ上げるのが得意な方ですが、毎回立派なコトを言うのが嫌になりましたね。
子供達の自由研究は「自由課題での研究強制」でしょうが、私もこんなの無くても、優れた研究者の出て来る率は変わらない気がします。 観察や発見の面白さや創意工夫の楽しさ、事物に潜む法則の不思議さを見せてやることが一番でしょう。 研究なんて言ったところで、もしきっかけになればと思ってやっている先生達が多いんじゃないでしょうかね。
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ZAM20F2 at 2014-08-16 18:47
創意工夫をして何かをするのは時間のかかるプロセスですが、一度そういうことをやっていると、新しく物事を始めるときにも、見通しが付けやすくなる気がします。とはいえ、そんな悠長なことはやっていられないので、お手軽にとなってしまい、何を学べるのだろうと思ったりします。先生方の善意は疑いませんが、善意の結果がよいことにつながるとは限らない気もしていて、過激な書きようになってしまいました。
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