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旧世代長作動対物レンズ

紹介してきた長作動の対物レンズはニコンの単独色補正が行われた世代の対物レンズなのだけれど、それが出現するまでは、ホットステージに対応できるような長作動の対物レンズは少なくとも国産では、ほとんど存在していなかった。その数少ない一本が
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で、これはニコンのユニバーサルステージ用の対物。表記は20倍だけれども、これは、ユニバーサルステージの半球レンズと組みあわせた場合で、単独では13倍程度。NAもその分小さくなっている。

もう一品はユニオン光学の対物レンズ。現時点でWeb上を探しても情報の欠片すら見当たらないので、記憶をもとにするなら、高温顕微鏡用に開発された対物レンズだという。20倍でNAが0.4。作動距離が10mm程度あるという対物レンズはこれしか存在しなかった。
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ただし、同焦距離は当時の標準からは大幅に異なっていて、そのままでは顕微鏡に装着出来ない。POHやPOSなどの単眼の顕微鏡では、ピント調整機能の粗調のラックアンドピニオンのラック部分を半分ずらせば装着可能だった。また、オプチフォトでは、ベースとアームの間にブロックを入れた改造品も存在していた。

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この対物レンズをその後に出現した20倍のSLWDと比較すると、NAは少し大きいけれど、それ以上の大きさの違いに驚かされる。ユニオンの対物の方はQuartzという文字があり、あるいは紫外も透過する設計になっているのかもしれないのだけれど、この変化には技術の進歩を感じさせる。
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ところで、オプチフォトの照明光学系の長さを変えると、照明条件は設計から狂ってしまう。また、対物レンズのNAがいくら高くても、表面観察用でカバーガラス厚0mm指定の対物レンズで、1mm厚のガラスの向こうにいる液晶を観察していて大丈夫なのかという問題もある。
対物レンズの使用条件に対する疑問は、これまでに出してきた20倍、40倍の対物にも当てはまるものである。液晶観察に問題を引き起こさないのかについては、二つの答が可能である。

一番目の解答は見えないものは存在しないということで、対物レンズの使用条件が満たされていないことにより、見えなくなった構造の存在は知られていないので、誰も問題に気がつかないということである。このバリエーションとして、擬解像による議論の誤りも認識されないと言うこともあると思う。周期構造のある液晶で、周期構造の見える深度から構造の議論をしているものがあるのだけれど、これなどは本当でないものを見ていても驚かない。
二番目の解答は液晶観察で対物レンズの分解能の限界に近い構造が問題になることは希であるというものである。液晶中の文様は連続的に変わるので分解能に近い変調は少ないし、また、欠陥線などの構造は単独で存在することが多いため、球面収差が生じていても黒い線がシャープに見えるか滲んで見えるかの違いなので、存在を見誤ることが少ない。




2017年12月追記
ユニオンの対物レンズのQuartz 2.0は、冷静に考えると厚さ2.0mmの石英の窓との組み合わせで球面収差補正がなされているとの意味ですね。高温物を対象にした顕微鏡なら、石英窓を使っているのは、納得できるところです。
当時は、合計2枚のスライドガラス越しの観察だったけれど、ガラス材こそ異なれど、厚さはほぼ指定通りだったので、実は、そんなに悪い画像ではなかったのかなぁなどとふと思いました。
by ZAM20F2 | 2015-03-17 22:01 | 顕微系 | Comments(0)
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