科博のリニューアル、いくつかの目玉がある。一つはコンパスで、これは、4~6歳の子どもとその保護者を主対象としたもの。一応、12歳以下は入場権がある。保護者1名について子ども5人までという制限があるので、幼稚園や小学校の団体がなだれ込んで傍若無人に走り回る状況にはならないようだ。
残念ながら、入場権がないので偵察できず。これまで、2Fの手前側には、アトラクション的なものがあったけれども、どちらかというと、対象年齢より低学年の子どもが、非科学的な楽しみ方をしているのを見る事が多かった。どうも、それを切り分けようとしたみたいで、2Fの展示は、少し中・高校生を意識したレベルに変えたような気がする。のだけれど、相変わらず非科学的な楽しみ方をする小学生団体にあふれていた。その中、親子連れで、父親が子どもに説明しながら廻っていた外人一家が印象に残った。この手の博物館で、小学校中学年程度以下の子どもが、学びをするのには、1対1ぐらいでつきっきりになる大人が必要な気がする。でも、大人の科学リテラシーが低いこの国では、それは困難な事なのかもしれない。 科博のWebを見ると、中・高生を呼び込みたいらしい。目標はよいとおもうのだけれど、必ずしも、それに成功した印象ではない気がする。この辺りの国がかかわった科学施設には、旧文部省系の科博の他に、旧科技庁系の未来館、旧通産系の息がかかった科学技術館がある。いずれも、主対象が曖昧な所がある気がする。3つも科学館がある一方で、The Exploratorium のような気合いの入った体験型がない。科博も未来館も、説明のボランティアが入っているけれども、The Exploratorium に比べると、展示の面倒を見る人の数が少ない気がする(The Exploratorium は20年近く前に行ったことがあるだけだけれども)。小学生以下程度を対象にするなら、もう少し人がいて、場合によったら行列指導をしながら、何かを説明して体験させるような科学館が必要だと思う。それが出来てはじめて、科博や科学館も、中高生以上を対象年齢としあきっちりした展示が可能になる(その場合には科博の恐竜や化石エリアと科学技術エリアはきっぱりと切り分けるべきだけれど)。科博と科学館があるにもかかわらず、The Exploratorium 系ではなく、未来館を作ってしまった旧科技庁の金を使うことしか、頭にない体質はどうにかならない物かと思ってしまう。 ところで、2Fの手前は気象衛星などの映像をリアルタイムに見せる展示になっていた。インタラクティブな展示というやつで、人が通ると、その回りに枠が出たりするのだけれど、見ていると、インタラクティブな動きに気を取られて、映し出されている内容をきちんと理解しようとせずに通り過ぎる人がほとんど。インタラクティブであることが、理解を妨げている印象が強い。 インタラクティブなものを頭から否定するつもりはない。たとえば、高解像度降水ナウキャストなんかは大好きで、あれと同じように地球上の見たいところのセンサー情報を拡大しながらリアルタイムで見られたら面白いと思う。ただ、それは1人もしくは、気のあったグループで一緒にやるから面白いので、赤の他人が異なる興味の元にばらばらにやっていると相互に邪魔になって面白いものではなくなるだろうと思う。 そしてまた床に投影されたものの上を動くと人の位置を囲むように図形が出るのは、感覚に訴える展示であって理性に訴える展示ではない。昔、MITのメディアラボの人のプレゼンで、卓球台の上に水面が映っていて卓球の球落ちた場所からさざ波が起こる映像を見たことがあるけれど、どちらかというと、それに近いセンス。その場での喜びになるけれども、理解しなければならない内容からは目を逸らすものになっている。 また、画像が投影されているために、部屋が暗くなっている。そのために主投影画像の反対側にある展示物が実質的に見えない。投影画像は1Fの地球史ナビゲータと同様に周期性があって、あるタイミングでは展示物側も明るくなるのだけれども、普通には、それは待っていられない。全体として、かなり駄目な展示になってしまっている。 展示画像を作る側としては、「先端」と称する小細工をやりたいのだろうけれども、それをどのように押さえ込むかが発注側の見識だろうと思う。そういう意味で、1Fは発注側の見識が見られるのに対して2Fのものは見識が見られない印象だ。 発注側の見識がないとどのような事が起こるかというと、一頃、そこら中に出来た郷土博物館について、ある民俗学者さんが「○○と××の2つの展示業者のどちらかが受注しているので、全国同じものになってしまっている。入って最初の展示を見ただけでどちらの業者が受注したか分かる」なんて話していたけれども、それと同じように、全国の科学館に、この手のインタラクティブな展示がしみ出さないかと懸念している。 この手の展示、それなりの人が視察に来ると、独占的に見られるだろうから、不特定多数が見る時に何が起こるか分からず、なんか、有り難い展示のように思ってゴーサインを出してしまうのではないかと思う。そうなると、無意味に金をかけて、子どもが目を輝かせるけれども、科学には近付かない科学館が増えていくわけで、そういう意味では科博の責任は重要なので、展示がどのようになっているかはきちんと確認してフィードバックして欲しい。
by ZAM20F2
| 2015-09-22 16:45
| 科学系
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