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亀に悪い

頭の格好を変えてくれる学習塾の広告、これまでは、問題を眺めていて、ほんとにこの問題で良いのかなぁと感じる時に取上げてきたんだけれど、今回の問題は悪くない、というか結構気に入っている。
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亀の雌雄が孵化までの温度で決るという話の上で、1問目はデータを元に、何度が雌雄の境界になっているかを問う設問
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2問目は本土と沖縄で、沖縄の方が雄が多い理由を尋ねる問題である。

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データを眺めると、高温側で一旦雌の割合が増加した後に、割合0に戻って、その後で1へとジャンプする。

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1問目に関しては、与えられたデータをどのように読込むかが問われているし、2問目は、沖縄の方が平均気温が高いという知識と、珊瑚が炭酸カルシウムで出来ているという知識、そして、炭酸カルシウムは近赤外まで含めて透明な物質で珊瑚の砂は太陽光を吸収しにくいという知識、さらに本州の砂浜は、経験的に、白砂は少ないという知識を組合わせて答を出す必要がある。

データの読込みや、経験も含めた知識の統合がきちんとした回答には必要で、これは、なかなかの良問だと思う。というわけで、学習塾の回答を見てみると

問1の回答は29.3℃、問2の回答はサンゴ砂は白いので日光を反射しやすく、砂浜の温度が高くなりにくいから。

となっている。この回答……………、私が採点者だったら、かなり点は低い。というか不合格。

元のブラフを見ると、確かに、29.4℃以上では雌比率は1に近いけれども、29.8℃は0.84程度。一方、割合が0で無くなるのは28.1℃の0.1、28.3℃の0.35。その後、28.9℃が0.1で29.0℃で一旦0になるのだけれど、境界が29.3℃というと、28.3℃の0.35は説明つかなくなる。そうなると、29℃付近で一旦低下するのが、測定ミスなのか、意味があるのかも分らないし、28℃後半と29℃前半のデータの欠落も気になる。というわけで、1の回答は、データ欠落があり、不確定要素もあるが、29℃付近で雌雄の決定確率が半々程度になると予想される。というのが、とりあえずの回答になる。でも、さらに考え出すと、砂の温度は日中と夜間で異なるはず。沖縄の方が平均気温が高いであろうことを考えると、夜間(少なくとも明け方)の砂の温度は、沖縄の方が高いと期待できるだろうと思う。こうなると、砂の温度は、平均温度なのが、それとも最高温度なのかが気になってくる。さらに言えば、孵化寸前では、雌雄は決定しているだろうから、卵の成長のある時点での話になるのだけれど、そのタイミングが昼か夜でも変るんじゃないかという気分になってくる。

こうなると、設問の設定が不充分だねというのが結論だ。悪くない問題なんだけれど、詰めがあまい。

問2に関しては、白いので反射しやすくというより、透明なので光吸収が少なくというべきだけれども、それでも上に上げたように夜間温度の問題もあるし、前段として沖縄の方が本州より平均気温が高いと思いたいので、

「本州より緯度が低いため、平均気温は高いと考えられるが、炭酸カルシウムの太陽光吸収量が本州の平均的な砂より小さいために、日中の温度上昇が低いことが寄与していると予想される」というぐらいになりそうな気がする。

ところで、実際に海亀の雌雄が何度で決るのかをWebで調べていたら、温暖化の影響で雌比率が上昇すると、絶滅するのではないかと危惧する人々のWebにも行きあった。

いや、でも、少なくとも海亀の人たちは、ほんの7000年前の縄文海進も経験して、まだ、この島国のあたりにいてくれるわけで、温度が上がったら、その分、産卵域を北方にのばすのではないかという気がするんだけれど。絶滅を気にするのは、亀の能力を低く見た人類のおごりのような気もする……


などと書いていて思い出したのは、中学生の頃に、「今度氷河期が来たら、生残る生物はどのようなものか」という問題に対して、授業中には、ほ乳類は鳥類のような恒温動物で、は虫類は両生類は生残れないだろうと教わっていたにもかかわらず、発作的にひらめいて「これまで何度も氷河期を乗越えて現在の生物がいるので、次回も、大体全部生残る」と書いて×をつけられたこと。未だに腑に落ちていない。



by ZAM20F2 | 2017-08-12 07:50 | 文系 | Comments(0)
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