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カラーコンパスPCF

追記2:カラーコンパスMFのエントリーを作りました。


追記:カラーコンパスPCFは改良版のカラーコンパスMFとなって販売終了しています。PCFの2018年製のものは有料でMFへのバージョンアップ可能のようです。手持ちのPCFはバージョンアップをお願いする予定で、バージョンアップした後に、改めて、バージョンアップ内容や使い勝手の変化を紹介します。(2018/8/4)


楢ノ木技研さんのezSpectra 815Vを見せびらかして遊んでいたら、秋月で浜松ホトニクスのマイクロ分光器を使った分光ユニットを3万円台で売っていると教えてくれた人がいた。
驚いてWebを見ると、確かに浜松ホトニクスのC12880MAを使ったUSB分光器を32200円で売っている。ATシステムという会社のカラーコンパスPCFという商品だ。

ATシステムのWebを見ると分光ユニットのお膝元にある会社でC12880MAを使ったカラーコンパスPCFとC12666MAを使ったカラーコンパスPCNを作っている。両方とも、定価は43200円なのだけれど、秋月の価格はそれより1万も安く、大丈夫だろうかと心配になってしまう。


ソフトはWindows用と、アンドロイド用(試作中)が提供されている。

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本体は非常にコンパクト。ラベルが貼ってあるのが見えるが、これは、使っているユニットのシリアル番号のようだ。本体とともに、波長校正データの係数を記載したシートが添付されていた。

初期の製品ではケースには受光部の穴が開いているだけだったようだが、現在の製品では、四角のプラスチック板がつけられている。きちんと計測していないが、ファイバーコネクタを取り付けられるようになっている気がする。ただし、本体側に集光光学系などはないので、素通しのコネクタを使ってファイバーを取り付けると、かなり効率が悪くなるだろうと思う。

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ソフトは非常に単純な作り。起動後にまず左上の検出をクリックして本体を呼び出す(自動認識ではない)。続いて右上の開始をクリックすると、測定が始まる。得られたデータを見て露光時間を手動で調整する。ただし、露光時間の値を変えても、一旦測定を停止してから再開しないと反映しないので、数値を入れて様子を見ながら最適の時間にすることは出来ない。

生データはものすごく下駄を履いている。光を入れない状態でダーク登録をして、ダークを引くをチェックすると、下駄は大体落とせる。

ホワイト登録は、透過測定などのリファレンス光の登録になる。表示モードに正規化があり、このモードでは、測定データをホワイト登録で除算した値が0~2の範囲で表示される気がする。

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この分光器で豆電球のスペクトル計測を行った。生データ1から3は配置を換えずに行った測定で測定結果に揺らぎがあることが分かる。拡散板は本体の前に拡散板を貼り付けて測定したもので、600nm付近のピークや700nmを中心に見られる構造が消失している。ezSpectraと同様に、きちんとNA0.2程度の光束を入れないと、分光器由来の構造が出現することが確認される。
測定の光源は豆電球を使っており、強度のピークは近赤外にある。測定データが600nm台で最大になっていると言うことは、この製品は波長毎の強度に関しては校正が行われていないことを示している。一応、浜松ホトニクスのWebに掲載されている典型的な強度分布を表示する機能はあるのだけれども、強度分布は個体差があるので、それを使って補整しても、スペクトル強度分布の正しさは保証されないだろうと思う。

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黄色いプラスチック板の透過測定を行ってみた。ホワイトがフィルターを入れない状態で、フィルターを入れた物が生データ。正規化が割り算の結果。測定の短波長側は、黄色フィルターで光が遮断されているはずだが、透過率が増えている。これは、分光ユニットの迷光の為で、どうやら、浜松ホトニクスのマイクロ分光ユニットに共通の事のようだ。


カラーコンパスPCFとezSpectra 815Vとでは、現時点で対象とする用途が異なっている印象が強い。ezSpectraの方は、単体としての測定器であるのに対して、カラーコンパスの方は、組み込みパーツ色が強い。

この点は両者の取り扱い説明書に如実に表れていて、ezSpectraの方は、かなりきちんとした説明書があるのに対して、カラーコンパスはマニュアルがないに等しい。ソフトのヘルプをクリックしても、バージョン情報が出てくるだけだ。

また、ソフトにしてもezSpectraの方は、起動するだけでスペクトル表示が行え、露光時間の自動調整機能もある。手動で露光時間を変えても、リアルタイムで結果に反映する。さらに、色温度や演色性評価指数もリアルタイム表示が可能だ。

ezSpectraは楢ノ木技研が波長/強度の校正作業を一台ずつ行っているので、可視波長域の光強度の測定が可能であるのに対して、カラーコンパスの方は、校正データを自分で用意しない限りは光強度の波長分布は正しくは得られない。LEDの発光波長を求める用途や、発光波長分布の狭い光源のスペクトル形状を求めるのには十分な能力を持っているけれども、可視域全域にわたるスペクトル強度評価は避けた方がよい。

透過や反射測定に関しては参照光源を用いた相対測定となるため、カラーコンパスでも問題なく行える。ただし、積算しないと、それなりの揺らぎが生じてしまう印象を持っている。一方のezSpectraは参照光が弱い領域では透過スペクトル測定をしない設定になっており、妙な結果がでないような配慮がなされている。もっとも、この親切さは、分かって使っている人にとっては、余計なお世話という面もある。

感度はカラーコンパスの方がezSpectaraに比べてかなり高い(露光時間の値が正しいなら、3桁ぐらい高い気がする)。本体のコンパクトさやケースにねじ穴があることなどから、たとえば顕微鏡に取り付けて顕微分光をするといった用途には、カラーコンパスの方が使いやすい気はする。

というわけで、現時点での使い分けとして、可視領域の光の強度分布も含めた測定がしたい場合には、標準電球が手元にあって、校正作業等も出来る人を除いてはezSpectraをお勧めする。一方、やりたいことが、LEDの点灯波長を測定するとか、透過測定を行うだけならカラーコンパスPCFでも問題ない。そして、とにかく感度が高い方がよいというならカラーコンパスPCFが選択肢となるだろう。


by ZAM20F2 | 2018-03-21 13:34 | 科学系 | Comments(0)
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