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でんじろうさんどこいくの

ぼーっとテレビを見ていたら、液体窒素と熱湯を100Lずつおけに投げ込むというのをやっていた。熱湯が凍ったら液体窒素の勝ち、すべて蒸発したら熱湯の勝ちという謎の勝負だった。どうやら、でんじろうさんの番組らしい。見ていて、「オトナは大変だなぁ」と思った。

実験の結果は、一気に気化した液体窒素のために、おけが壊れて、他に予定していた実験はできなくなり、でんじろうさんが「実験はやってみなければわからない」といったことを言っていた気がするのだけれど、これ、科学の実験の気がしない。

ざっくり調べると、液体窒素の気化熱は約200KJ/Kg。それに対して水の融解熱は325KJ/Kg。液体窒素の密度は密度は0.81Kg/Lなので、同じ容積の液体窒素は0℃の水を完全に凍らせる能力はない。では、部分的にでも氷ができるかというと、それは、熱湯の温度に依存する。熱湯といっても、紅茶を入れるのに適した温度から、ダチョウ倶楽部の熱湯風呂まで温度の幅は広い。水の比熱は4KJ/Kg程度なので、液体窒素の気化熱(200KJ/Kg)で同じ重さの水の50℃程度の温度変化は引き起せる。気化した後のガスをうまく熱交換して使えば、もうすこし冷却できるけれども、あの実験では気化したガスは大気に逃げてしまうので冷却は期待できない。最初の液体窒素の温度が沸点より低ければ、液体窒素の温度上昇分だけ冷却できるけれども、窒素は15℃程度の温度範囲しか液体でなく、比熱は2KJ/Kg程度なので、あと7.5℃冷せる程度だ。

ということはダチョウ倶楽部の熱湯風呂だったら、ごく一部の熱湯を氷にできるかもしれないけれども、玉露に適した温度では、氷は出来ないというのが結論となる。これは、単純な計算で分ることで、実際に実験をやらなくても、熱湯の勝ちだ。氷が出来たとしたら、実験に間違いがあったと言うことになる。でんじろうさんの実験は、演示実験という分類に含まれるものだと思う。演示実験とは、高校の物理でもおなじみのモンキーハンティングのように物理に対する理解や納得を深めることを目的としたものだ。では、液体窒素と熱湯の対決で、理解や納得が深まったかというと、そもそも、そういった科学的な話はなかったように思う。そしてまた、科学的な話をするなら、100Lも使う必要なく、100ccでも十分だろうと思う(断熱などはより注意する必要があるかもしれないが)。そう考えると、あれは、演示実験としても成立していない。単なる、どうでもよいテレビのバラエティーショーだ。

というわけで、「オトナって大変だなぁ」と思った次第だ。100ccの液体窒素とお湯を混ぜても、派手な映像とはならない。テレビ的には、それじゃ駄目じゃんというところだろうと思う。「大科学実験」という反科学的な番組でも、意味ない巨大化がなされるけれど、どうやらテレビの人の頭の中は粗雑で、大きければよいというエールチョコレートの昔から進歩していないものと見える。で、それにつきあわないと番組が続けられないように思えるわけで、科学じゃないと分っていても、やらざるを得ないのだろうなぁと感じた。食べていくのは何事も大変だ。

このブログでも何度か書いたことがあると思うのだけれど、昔、小学校の先生から「子どもを科学館に連れて行くと、液体窒素で花を凍らせる実演などを目を輝かせて見るんですけれども、学校に戻ってくると、それは学校とは別の華やかな世界の話で、学校の理科は、そんな凄いことを見せるわけではないので、科学館に行って液体窒素を見たことによって、逆に学校の理科への興味を失う場合がある」といったことを伺った事がある。あのテレビをみて、液体窒素すげーと思うこどもが、学校の理科で液体窒素が出てこないのでつまらないと失望することをでんじろうさんが望んでいるとは思わないけれども、そうなる危険性は十二分にあるし、それ以上に、普通のオトナに科学を誤解させる危険性がある。

でんじろうさん、どこへ行きたいのだろう。

by ZAM20F2 | 2019-04-09 06:09 | 文系 | Comments(0)
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