等方相からN相への転移では、N相は界面等の影響がなければ、球形の液滴として出現する。もちろん、N液晶には異方性はあるけれども、界面で配向が正弦されるため、液晶自体の異方性はドロップレットの形状には反映しないように思う。
一方、等方相からSmA相が出現する場合には事情は大いにことなり、バトネ(フランス語で棍棒の意味らしい)と呼ばれる組織が出現する。
写真左の暗部は空気。空気界面で分子は界面に垂直に成長する。一方、右側の暗部は等方相液体で、その中に棒状のSmA相が出現している。
温度がもう少し下がると
と、バトネが成長していく。そして、バトネが空気界面から成長している領域と接すると
のように、空気界面から成長した部分にも欠陥がはいる。逆にいえば、それだけ、SmAの層構造は柔らかく、容易に変形するわけである。
バトネでの配向ベクトルの方向は棒の長手方向であり、層構造は棒の長手に垂直になっている。層状物質では、一般には層内で分子がくっついていく成長は容易に起こるけれども、新たな層の形成は困難で平べったく育つ傾向があるように思うのだけれど、SmAは棒状に細長く育つ。理由は、必ずしも明らかにはなっていないように思うけれど、多分、らせん転位があると、バトネのような成長が起こるのではないかと思う。
というのは、空気界面からの成長では安定して空気界面に平行な層構造が成長していくのだけれど、ときどき、凸が出来て、そこが急に成長して、そして、ヒビが入ることがある。これは、何らかの理由で、その部分で新しい層が急激に出来るようになっていることを意味しているわけで、その理由としては、らせん転移がもっともありそうなものであるように思う。
最後に、液晶がある部分が完全にSmAになった状態。