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スコッチクリアテープ(265nmの位相差板)

一つ前のエントリーで、265nmの位相差板を使う超鋭敏色法を取り上げた。問題の一つは265nmの位相差板をどうやって入手するかで、自作すべく雲母板を試みたのだけれど、一定の厚さで試料を愛で行くのは楽ではなく、雲母はぎ目明治ににならないと、雲母の薄皮はぎは楽ではないという印象となった。

リタデーションの少ない素材としては、スコッチのクリアテープが一部で有名だ。この品、ポリプロピレン製らしいのだけれど、セロファンテープと比べると、リタデーションは遙かに小さく、そして、2軸性が強い。斜入射光があるときは2軸性が問題となるのだけれども、オルソスコープ観察みたいに平行光線の照明なら問題ない。だいたい、雲母も2軸性で、それが位相差板として使える位だから、何ら問題はないはずだ。

というわけで、クリアテープを何枚か重ねではぎ取って、一旦を斜めに削いで平行ニコル下で赤紫になる枚数を探した。大体6枚で目的の色になる模様。そこで、ピンセットを使って、上に重なっているテープをはぎ取る。はぎ取ったものをクロスニコルで見ると、一様な黄色の着色。

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これは、265nmの位相差板としては妥当なところ。これを平行ニコルにすると、見事に赤紫になる。
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しかし、色むらが生じる。クロスニコル下で色差が見えないにもかかわらず、平行ニコルで色差が見えるのは、まさに鋭敏色効果。テープは、少しばかり不思議なところだけれども、細かい複屈折ムラがあるらしい。ただ、ピントをずらすと、一応均一な色調となる。
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そもそも、位相差板は試料とは異なる面に置くわけだから、ピントをずらして均一な色調になるなら、それなりに使えるかなぁと思っている。
ところで、複屈折ムラだけれど、クロスニコルで消光位置にして観察すると、均一に消光せずに明暗ムラが生じる。

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この画像は、上のものより20倍程度露光を増やしている。同じ露出なら、ほぼ真っ暗になる。
さて、光軸が揃っていて、ただし複屈折値にムラがあるなら、この条件で完全に消光するはずだ。しかし、明暗ムラがあるということは、光軸方向がばらついているということを意味している。これは、かなり予想外の出来事だ。というのは、この手のテープは長手方向の強度を増すためにフィルムを引っ張って(延伸して)ある。普通は、一方方向に延伸する一軸延伸されていて、その場合には光軸方向には普通はムラはできないと思う。

このフィルムの光軸はテープの長手から傾いた方向にある。
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下の真っ黒のところは何もない部分で、上がテープのある部分。境界線は長軸に平行ではなく見事に傾いている(これに対して、普通のセロテープは長手方向が光軸だ)。光軸がテープの長手からずれているのは、使っている物質の特性かなぁと長らく漠然と考えていたのだけれども、どうも、それは完全な間違いで、このテープは1軸延伸ではなく、2軸延伸で作られているのではないかという気がしてきた。それなら、このテープが2軸性を示すことも理解出来る。

世の中奥が深く、そして、身近なところに、そのヒントが隠されているものだ。

さて、テープの枚数を倍にすれば普通の鋭敏色板となるはずだ。というわけで、倍の枚数のものも作ってみた。
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下半分はテープがない。ここに鋭敏色板を入れると、色が入れ替わる。実は、上のテープは、鋭敏色板とリタデーションが相殺する角度に入れてある。消光はなかなか完璧で、この厚さでほぼ530nmのリタデーションになっていることが分かる。
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このテープ、1枚あたりのリタデーションは約45nm。ということはブレースケーラー的なものが試せないかと思案中。

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by ZAM20F2 | 2018-06-18 07:44 | 顕微系 | Comments(0)

260nm鋭敏色板(超鋭敏色法)

大昔の応用物理学会誌に日本光学の上野正さんによる「偏光板を使用した偏光顕微鏡」という記事がある。ニコンのPOHに関する話なのだけれど、その中で対物レンズの歪みについては久保田廣さんの開発した超鋭敏色法を用いてチェックしている旨の記述があった。
鋭敏色といえば、通常は530nmの位相差板による赤紫が、わずかな位相差の変化により色調変化を起こす手法だけれども、それに超が着くのはどのような方法かと興味をもって、久保田さんの論文を探してみた。
さて、その方法は、通常の鋭敏色板の半分の位相差の265nmの検板を用いるという手法。もっとも、この検板をクロスニコルの間に入れても、弱い黄色系の着色で、位相差変化による色調変化は少なくて、全然鋭敏ではない。ところが、クロスニコルだった状態を平行ニコルにすると、赤紫の偏光色が現れる。265nmの位相板を平行ニコルに挟むと、265nmの倍の530nmのところが透過率0となって、クロスニコルに530nmの位相差板を挟んだときと類似のスペクトルになるというわけだ。
これだけだと、感度は同じになりそうだけれど、これに、たとえば10nmの余計な位相差が加わった状態を考えると、530nmの位相差板では540(520)nmの偏光色になる。これに対して、265nmの位相差板は275(255)nm板になるけれど、この時に、透過光が0になる波長は、それぞれの倍の550(510)nmとなり、普通の鋭敏色板より色調変化が大きくなる。
これは面白いと試したくなったのだけれど、問題は265nmの位相差板の入手方法。
この波長の位相板、正確には266nmの位相差板だけれど、実は世間では普通に売っている。Nd:YAGレーザーという、波長が1064nmのレーザー用のλ/4板、あるいは、その倍波の532nmのグリーンレーザー(緑のレーザーポインターは大体これだ)のλ/2板が転用可能なのだ。ただ、問題は、業務用として使うんだったら問題ない価格でも、趣味として使うには少しばかり高価。頼りのネットオークションはというと、単体で出てくるのは見たことない(どこかの部品に組み込まれているのは、探せばあるかもしれない)。
というわけで、なんとか265nm位相差板を作らなければならない。というわけで思いついたのが雲母の薄板をはぐこと。偏光顕微鏡の検板も雲母を使ったものがあるはずなので、何とかなるだろうと、絶縁体板の雲母板(10枚で100円程度だ。送料の方がはるかに高く付いた)を買い込んではいでみた。
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背景が白なのは、平行ニコルだから。で、鋭敏色周りの黄色から紫を経て青まで見えているけれども、雲母の一枚(だと思う)毎の色調の差がよく見えること……
とりあえず、雲母は断念して、スコッチのクリアテープでやってみるかと思案中。
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by ZAM20F2 | 2018-06-13 08:10 | 顕微系 | Comments(0)

そのカッター、刃を出し過ぎです

赤いキノコの本の数冊横にあって、ついでに買われてきた本。肥後の守を含むナイフが教育効果あるよね系の本で、まあ、ある意味予想どおりの内容。ただ、出てくる刃物は肥後の守やアーミーナイフ、鉈などで、カッターナイフは使用例としては出てこない。その点はまっとう。
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一つ、なるほどと思ったのは、子供に肥後の守を使わせている小学校の話。その導入を行った校長先生は、時間をかけて親を説得して導入を果たし、そのときに、子供に向かって、「鉛筆を削るためのナイフで悪ふざけをして、もし友達を傷つけてしまうようなことが起こったときは、校長先生は学校をやめなくてないけません。ナイフというものは危ないものですが、でも、あえて皆さんには使って欲しい。」と語りかけたそうだ。本当に責任をとる覚悟のある大人の言葉は、子供も重大に受け止める。

ところで、このブログで昔に、中学生向けの自由研究の本に、刃を出しすぎのカッターの使い方が出ていると晒したことがあるけれども、どうやら、その本には悪い手本があったのではないかという気になりつつある。

その悪い手本の1冊がこれ。
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そこら辺の本屋には置いておらず、神保町に行ったのは、この手の本を入手するため。最初の方に、ルーペの使い方なんかが書いてあるのは悪くはない。ルーペを目に近づけて持つのは大人にも、あんまり知られていないこと。現場でどれだけ実践されているかはともかく正しいことが書いてある。
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で、悪い手本の部分はというと、カッターナイフの使用例。
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これは、明らかに刃先の出し過ぎだ。これ以外の似たような本も見たけれども、そちらでも刃先が出し過ぎの図がある。これらの本、一応、
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と、お役所が内容をチェックしたことになっている。ということは、お役所からして、カッターナイフの危険な使い方を推奨していることになる。

この本には、何カ所か同じようなカッターナイフの使用例が出てくるけれども、薄片を作る場面では、さすがにカミソリを使うことになっている(同種の別の本では、その場面でカッターナイフの刃をホルダーから取出した状態で使う絵になっていた)。図を見ると、カミソリの反対側は、テープか何かでカバーをしてそちら側の刃で手を切らないようにしているように見える。カミソリの刃に注意という文言はあるのだけれども、何をつかって、どのように処理をしているのかの説明はない。カミソリの刃に注意なんて書くより、具体的に、何をすべきかを記すのがより重要なはずだ。責任をとる気のない大人のアリバイ作りというのは、間が抜けていて見苦しいだけのものだ。

子どもの刃物場慣れを心配する前に、生物学教育者の刃物離れを心配した方が良さそうな状況だ。

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by ZAM20F2 | 2018-05-27 13:58 | 文系 | Comments(0)

ピンポイント

神保町を歩いていて、山関係の古本を多く扱っている店の前を通ったので、久しぶりに覗いてみた。アルプ全冊が、数冊の欠があるものの3万しないのを見て、随分と安いなぁなどとしみじみし、今井雄二さんの本も、周はじめさんの本も見当らずに帰ろうかとおもったら、あまりにもピンポイントのタイトルに惹かれて、思わず買込んでしまった。
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著者は、このキノコのファン。なにしろ、試食するぐらいだから、病膏肓に入るという状況ではあるけれども、どちらかというと、絵画や文学などで出てくる話を拾っていて、このキノコを通して菌類に詳しくなれるかとも思って買込んだ身の上としては少しばかり予想外の買物となってしまった。

諏訪のあたりに住んでいた人から、このキノコをゆでこぼして干した後に、味噌汁のだしにすると旨いけど、入れすぎると舌がしびれるという話を聞いたことがあるのだけれども、ざっくり読んだ限りでは、舌のしびれをもたらすような毒性分ではない気もするけれども、どうなんだろう。さすがに、自分で試す気はない。

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by ZAM20F2 | 2018-05-22 07:57 | 科学系 | Comments(0)

CASEと現実の間 又

前のエントリーで前向き推論と後ろ向き推論を取りあげた。後ろ向き推論は科学研究で多用されるものだが、、科学教育として明示的に意識され、それをはぐくむ手法が検討されてはいない手法である気がしている。多くの「考える科学教育」は提唱されているけれども、それらで扱われているのは「観察」から一本道に「仮説」を立てて進むような、前向き推論に基づいたものである印象が強い。

こうなってしまっている理由の一つは科学教育は教育学者によりなされており、前向き推論の使い手であっても、後ろ向き推論を研究に使うことは少なく、理系の科学研究の方法が体感出来ていないためだろうと思う。しかし、後ろ向き推論が研究の現場で使われる手法で、しかも、多くの生徒さんが、その思考法を身につけていないとするならば、後ろ向き推論こそ、このブログで昔に取上げたCASEと現実の間を繋ぐもの(の少なくとも1つ)として、科学教育の一つの柱になりそうだ。

「CASEと現実の間」にひさしぶりに戻ってきたのは、高等学校の課題研究で「未知で新規なことがら」を対象とする「教育的意義」について少しばかり思案していたためだ。理数科の高校では課題研究というものが行われているし、新しい指導要領では、探求活動というのが入ってきて、高等学校の生徒さんも「研究的なこと」をやる場面が出現することになるらしい。でも、個人的には、それらの「研究的なこと」の内容や進め方は、研究者視点からは「研究ではないなにか」になりそうな気がしている。そして、「研究ではないなにか」をやっても、生徒さんが学ぶことは少ないだろうと思う。そんな、背景があるものだから、課題研究の感想を求められた時に、「それは研究ではない」と言ったことを口に出してしまうことがあるのだけれど、それに対して、高校の先生方からは「企業や大学のような装置がない高校では新規な事柄を対象にした研究はできないし、目的は教育だ。」と言われると、なかなかに返す言葉が見つからなかった。これは、私だけのことではなく、どうも、研究を生業とする人間と、高校の先生型の研究のやり方を巡る議論は平行線で不毛なものとなってしまいがちのようだ。

このような状況を打開するためには、高等学校の先生に、理系の普通の研究スタイルと、その手法により「未知で新規な事柄」を相手にすることによって初めて得られる「教育的価値」を説明して、それらの価値を理解してもらう必要がある。理系の研究スタイルを理解してもらうためには、平賀壯太さんの『蝶・サナギの謎』などを題材に説明するのがわかりやすいかと思案している。この説明の過程で、同時に、後ろ向き推論がどのように研究の過程で使われているかも示す事が出来ると思う。

ただ、未知で新規な事柄を相手にしたからと言って無条件で後ろ向き推論の技術を身につけられるわけではない。効果的な教育を行うためには、それなりの準備が必要となる。「未知で新規な事柄」を扱う場合には、後ろ向き推論をする前提として「探偵術に最重要なのは、数ある事実から周辺のものと本質とを見極める能力です」が必要となる。最初のステップで着目した事実が本質から外れた物であったとすると、いくら後ろ向き推論をおこなっても、正しい結論には行き着けない。このため、「数ある事実から周辺のものと本質とを見極める能力」をとりあえずは棚上げして、本質的な事実がは限定して与えられた状況で、後ろ向き推論を行う練習から始めるのが良い気がする。

後ろ向き推論を行う課題開発に対して参考になるのは、NHKの「ドクターG」という番組で、研修医が症例とその再現ドラマを元に病理診断を目指すものである。この番組では、最初に示された症例を引き起す病因を可能な限りあげて、その病因で症例を全体的に説明できるか、反する部分はないかなどをチェックしていく。そして、複数の候補が残った場合には、さらにそれらを区別する検査を行い、最終診断となることが多い。この仮定で、研修医達は、自分か考えていなかった可能性も含めて思考の幅を広げ、さらに初期診断で説明不可能な症例部分を追求される。実際の医療の現場でも症例検討などで、このような作業を通して全体を見渡しながら、可能性を絞っていく後ろ向き推論の芸が身についていくのだろうと思う。ただ、さかのぼれる深さは、研修医の知識レベルにも依存している。番組では研修医は、その場の議論に対応できる知識は持ち合せている。それ故、自分の診断では説明のつかない症状があると追求されれば、その診断が誤っていることを認識出来る。また、最終的な診断も納得して理解できる。

前のエントリーであげた、装置の故障診断で話を進めるなら、ヒューズの存在を知らない人間は、故障の原因としてヒューズ切れを上げることは出来ない。ただ、一方で、また、ヒューズが切れていることが故障の原因であると示されても、新たな(単体の)知識の習得にはなっても、論理的な思考方法の訓練とはならない。しかし、それでもケーブルや電源等の確認を通して、装置本体に問題があるまではたどり着ける。知識のレベルにより、最終的に到達する深さは異なり、また、後ろ向き推論の幅も変化するけれども、一応の訓練は可能であるようには感じられる。


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by ZAM20F2 | 2018-05-18 07:05 | 文系 | Comments(0)

草稿:前向き推論と後ろ向き推論について

人間の理解が皮相的になりがちであるのは、我が身を振り返って屡々感じること。そんなこともあり、本屋でタイトルに惹かれて手に取った本の中に前向き推論(Reasoning forward)と後ろ向きの推論(Reasoning backward)の話が書いてあった。
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前向き推論というのは、その時点で知られている事柄を元に、その結果を予測する操作。本では予測推論(causal reasoning あるいはpredictive reasoning )という言葉も使われている。後ろ向きの推論というのは、生じた事象に対して、その原因を遡って推測する操作で本では診断推論(diagnostic reasoning)とも記されている。本によると、前向き推論の方が後ろ向き推論より容易であるという。

もっとも、この話は、この本で始めて主張されたことではなく、私の知る限りでは、ホームズ氏がワトソン氏に向かって話していることそのままである。ホームズ氏は前向き推論をreason synthetically、後ろ向き推論をreason analyticallyと記している。ホームズ氏によれば、後ろ向き推論を出来る人は50人に1人程度だという。ホームズ氏はこの点について、日常生活では前向き推論の方が役に立つ能力であると記している。ホームズ氏は、この方法は簡単な物だとも言っているのだけれど、ワトソン氏には出来ないと、その後で主張しているところを見ると、ホームズ氏にとっては簡単な方法でも、普通の人にとっては、必ずしも容易ではない印象が強い。しかし、ホームズ氏も、この本の著者も、何故前向き推論の方が容易であり、多くの人が前向き推論しかしない理由を説明していない。

後ろ向き推論は、理系の研究現場では頻繁に使われる手法であるように思える。医者の病理診断は診断推理であり、まさに後ろ向き診断そのものだ。病理診断の場合には、その症状を起こす可能性のある理由を可能な限り考えて、その中で最も適合するものを選んでいくようだけれども、これは、未解明の問題に立ち向かう時の人のやり方そのものでもある。謎に対して、可能な解釈を考え、その解釈の妥当性を検討しながら先に進んでいく。科学の進み方そのものである。

可能な解釈は、仮説(作業仮説)と呼ばれることもある。よくある科学の進め方の解説では、一つの仮説が提示され、それの成否を検証するという筋道になっているけれども、診断巣いるでは、複数の仮説が並列に存在して、しかも、それらの仮説の間には矛盾が存在するのが普通である。研究の進み方は、決して単線的なものではなく、複雑な分岐から、もっともらしいことを選んでいく作業だ。研究は、仮説の妥当性の検証ではなく、複数の仮説の中から、より正しいものを選択する作業であることが多い。

さて、本題に戻って、後ろ向き推論が何故難しいのかを、一つの例を用いて考えて見よう。上では医者の病理診断の話を出したけれども、そちら方面の知識はないので、もう少し身近な機器のトラブルシューティングを扱うことにする。例えば、ある機器を使う時には、その機器の電源ケーブルをコンセントに差し込む。これは、「電源ケーブルが入っていない→その機器のスイッチを入れても動かない」という前向き推論があるから、前段を満たす操作をおこなっていると考えて良いかと思う。一方、日常的に使っていたはずの機器が動かない場合には、後ろ向き推論では、単一ではない複数の可能性が考えられる。たとえば
・器機に接続したケーブルが抜けていないか
・ケーブルが断線していないか
・本体のヒューズかブレーカーが落ちていないか
・テーブルタップの元の電源が抜けていないか
・コンセントのブレーカーが落ちていないか
・停電していないか
・バックアップバッテリーは大丈夫か
・機器の故障ではないか
・部屋の空調がついていないか
・部屋のドアの開っていないか
・仏滅ではないか
と言った可能性をあげることが出来る。そして、上の方の理由をより重視して、「仏滅だからだ」などと冗談で言うことはあっても、真剣には考えないでいられるためには、それなりの背景知識が必要となる。実際、電気に関する一切の知識の持ち合わせがなかったら、心から「仏滅だから」とか、「蜘蛛を殺した祟り」だと考えていても驚かない。仏滅の上の2つは、トラブルとは直接結びつかないように思うかもしれないけれども、空調の故障で部屋の温度が上がって装置が停止している可能性や、空調がついているなら停電の可能性は除外する情報になっているなど、実は事象に関わっている可能性は排除できない。ドアの開閉についてはその建物に特異な事象として関係がある可能性がある。この場合は、その場所に限った知識の有無が重要となる。

この例で分かることは、前向き推論では、分かっている情報以外の新たな情報は用いずに推論を行えるのに対して、後ろ向き推論では、関連する情報を選択する必要があること。いわゆるフレーム問題が関わってくる。そして、適切な枠組みを選ぶためには、生じていることに対する、ある程度の知識が要求される。勿論、前向き推論でも、「電気がなければ動かない」という知識は要求されているのだけれども、後ろ向き推論は、より具体的に、電気が遮断されうる状況や装置の状態に関する知識が必要となる。

実際、ホームズ氏は古今東西の犯罪に関する知識は豊富に持ち合せているし、お医者さんも一般人に比べると症例に関する豊富な知識の持ち合せがある。ただし、持っている知識の中で、どれが適合出来るかの判断が出来なければ知識は使い物にならない。この作業は、診断結果が既知の現象で、的確な情報が得られており、その現象に関する知識も存在する場合には、機械的に行える要素が強くなる。少し前に病理診断のAIが人間の医者には見抜けなかった、特殊な白血病の判断を正しく下したことが話題になったが、病因毎に症例のリストが存在していて、それらの比較検討が可能なら、たしかに起こりうる事だろうと思う。

しかし、対象が未知の事象の場合は、何を情報として取り上げるかから問題となる。ホームズ氏が「探偵術に最重要なのは、数ある事実から周辺のものと本質とを見極める能力です」と言っている部分が最初の関門となる。

この項続く (たぶん)

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by ZAM20F2 | 2018-05-13 08:56 | 文系 | Comments(0)

少し違う

ホットステージを使う場合は、超長作動の対物レンズが必要になるのだけれど、当然のように、コンデンサの方も長作動のものが必要となる。ところが、ニコンさんの正立用の長作動コンデンサの作動距離は10mmしかない。某M社のホットステージも、自作のホットステージも試料面まで15mm程度はあるので、作動距離が足りない。米国の液晶研究者が起こした企業さんでは、作動距離が20mmでニコンにもオリンパスにも装着できるコンデンサを売っているのだけれど、新品は手に届く値段ではないし、ネットオークションに出てくるのは見たことない。こんな話を顕微鏡に詳しい人に話したら、ニコンの倒立顕微鏡用の長作動コンデンサが正立にも装着可能と教えてくれた。
幸い、こちらはネットオークションにも出ることがあるので、入手して便利に使っていたのだけれど、当然のように予備が欲しいなぁと思っていたら、少し前にオークションに出ているよと教えてもらって、めでたく2つめが手元にやってきた。
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眺めると、一方はPhase Contrastで、新しく来たのはPhase Contrast-2。違いは何かと眺めてみると初代はPh-LからPh-3とO、Aのターレットだけれど、2代目はOがなくなってPh-4がついていた。それ以外に、位相差の部分を眺めてみると
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初代が完全なリングなのに対して、2代目名は
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3カ所の支えが着いている。少し角度をかえると、2代目は
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リングの間には何もなく穴であるのに対して、初代は
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ガラス板に遮光板が取り付けられた構造になっている。
比べてみると、初代の方がコストがかかる作りになっているような印象。あるいは、単に、2代目で使われているような打ち抜きが出来なかったせいかもしれないのだけれど、ニコンの顕微鏡の変化の流れを見ていると、2代目の方が低コストなんじゃないかと感じてしまう。

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by ZAM20F2 | 2018-05-10 08:46 | 顕微系 | Comments(0)

2mm水槽

1.5mm厚の水槽で正面向いた姿も映っているので、水槽の厚みは問題ない気もしたのだけれど、一応、2mm厚の水槽も作ってみた。縦置きでも横顔の率があんまり上がらないので、水平置きで顕微鏡で撮影している。
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やってみて分かったことは、深さ方向のピントあわせが難しくなり、歩留まりがさらに低下すること。
相変わらず、位相差リングでの照明だけれど、フラッシュの多灯にするなどして、もう少し照明を工夫する必要がありそうだ。
ただ、ここのところ、ミジンコの増えがわるくて、どうしたものかと思案している。

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by ZAM20F2 | 2018-05-08 07:46 | 動物系 | Comments(0)

負けない

MWSさんの4月12日の写真にニコンのコンテスト向けの作例が挙がっているけれども、手元にも負けないぐらいカラフルな絵があったので思わずアップすることにした。
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一応、液晶の写真なので、もっともらしい説明をつけることもできるのだけれど、実体は、すごく適当に撮った一枚。
まあ、こんなところに上げているということは、出す気はないということなんだけれども……。
あ、でも、液晶を偏光顕微鏡で覗いていると、楽しいよ。


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by ZAM20F2 | 2018-04-12 21:40 | 液晶系 | Comments(0)

演色性評価指数についてのメモ

しばらく前に、何人かでezSpectra 815Vを使ってLEDの演色性評価指数を計りながら頭を悩ませていた。多くのLEDは色温度が高すぎるので、適当なフィルターで色温度を下げて色味をよくしようという話で、実際、フィルターによって、LEDの青すぎる色味が落着いて、見た目には自然な光に近づくのだけれども、演色性評価指数は低下してしまうのだ。
何でかなぁと思って、演色性評価指数の計算方法を調べて分ったことは、あの値は、計測光源の色温度と同じ色温度の参照光源(黒体放射か色温度の関数として指定されるスペクトル)からのズレを特定の8色について評価した平均値であるということ。このため、青色光が強くて、色温度が1万Kを超えちゃうようなLEDでは、赤色側の光が欠如していても、その色温度の光としては赤色が弱いのは当然なので、それなりの値の指数が出てしまう。そして、フィルターを使って青色光を遮ると、色温度が低下する結果として、あるべきはずの赤色光の欠如により指数が低い値となってしまう。
でも、フィルターを入れた方が、光源の色温度が下がって、回りの光との色温度の差が小さくなるために、青みが取れた、より自然な光に見える。

その時のLEDは手元にないのだけれども、フィルターにより演色指数が低下するのは、豆電球を使っても再現できる。
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まず、豆電球のみの測定ではRa98が出てくる。この時の色温度は2600Kだ。
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これに写真用のMC-80Aをかぶせてみると、色温度は4100Kまで上昇する一方で、Raは88に低下する。
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80BだとRaの低下は少なく、91だけれど、色温度は3500Kまでしか上昇しない。
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ついでに、ニコンの顕微鏡についている色温度変換フィルターを試してみると、80Bより効果は少なく色温度は3000K程度で、Raは94という高い値を保っていた。
フィルターにより色温度を変えることにより、どうしても黒体放射からは外れてしまうために、Ra値が低下するという印象だけれども、現実問題として、それにより色再現に問題が生じることはないような印象がある。
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by ZAM20F2 | 2018-04-11 20:50 | 科学系 | Comments(0)